アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎では、かゆみのある湿疹が体の色々な場所に出て、悪くなったり改善したりを繰り返します。生後2ヶ月~6ヶ月ごろに発症することが多く、湿疹は頭や顔から始まって、体幹部や手足にも広がっていきます。年齢が進むにつれて、首、肘や膝の関節の内側に発疹の出る部位が集中してくる傾向があります。アトピー性皮膚炎の治療のポイントを3つ解説します。

治療の基本は、ステロイドのぬり薬とスキンケア

 アトピー性皮膚炎の湿疹には、ステロイドのぬり薬を使います。ステロイドは適切に使用すれば、安全で効果が高いです。湿疹が悪化する前に、早い段階から治療をして、皮膚をつるつるの状態に保ちましょう。ステロイドの強さに応じて何種類ものぬり薬があります。湿疹の重症度、年齢、湿疹のある部位に応じて、ステロイドのぬり薬の強さを選びます。たとえば、子どもの皮膚は大人より薄いとか、ほっぺたは手足の関節部よりもステロイドが吸収されやすいとか、色々なことを考慮します。医師から説明されたぬり方をきちんと守りましょう。

 アトピー性皮膚炎では、湿疹や乾燥肌のせいで皮膚のバリア機能が失われています。保湿剤でスキンケアをして、バリア機能を回復させましょう。シャワーやお風呂の後には、皮脂が洗い流されてしまって、皮膚はかえって乾燥しやすくなっています。入浴後は15分以内に、全身に保湿剤をぬりましょう。特に肌が乾燥しやすい人は、入浴後に限らず、朝起きたときや、出かける前と帰宅時などにも、保湿剤をぬるとよいでしょう。その際、皮膚を強くこすってはいけません。優しくぬりましょう。湿疹がある部位には、ステロイドをぬってから、保湿剤をぬります。

悪化因子を避ける

 アトピー性皮膚炎を悪化因子となるダニやカビ、ホコリなどは家の中にありふれた存在です。家の掃除が重要です。カーペット、じゅうたん、ふとん、エアコンのフィルターも忘れずに掃除してください。また、毎日きちんとシャワーを浴びて体をきれいにします。汗や汚れが皮膚についたままだと、アトピー性皮膚炎は悪化します。

 卵白や牛乳に対する食物アレルギーも、湿疹の悪化と関係します。ただ、食事の制限は、子どもの発育に大きく影響しますので、必要最低限にすべきです。ぬり薬やスキンケアで湿疹を抑えられるのなら、食事制限は不要です。食事制限は医師の指導のもとで行って下さい。

かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の飲み薬

 アトピー性皮膚炎の発疹は、強いかゆみが特徴です。かゆいと睡眠不足になり子どもの成長にも悪影響があります。皮膚をかきむしることで、皮膚のバリア機能が低下して、アトピー性皮膚炎の発疹も悪化してしまいます。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の飲み薬を飲んでもらいます。抗ヒスタミン薬は、かゆいのが良くなっても、すぐに止めずに飲み続けましょう。かゆみを感じる神経の働きをブロックし続けることで、かゆみを感じにくくできます。皮膚をかかなくなれば、アトピー性皮膚炎の発疹も改善しやすくなります。

 抗ヒスタミン薬の中には眠気が強くなる副作用があるものもあり、かゆみが強くて眠れない場合は、ちょうどよさそうです。しかし、眠気の強くなる抗ヒスタミン薬は、けいれんを起こしやすかったり、昼間も眠くて集中力を欠いたり、思わぬ事故につながったりします。最近は眠気の副作用のない抗ヒスタミン薬を使うべきと考えられています。かゆみを抑える効果は、眠気を強くするかどうかとは関係ありません。

Q&Aコーナー

Q:アトピー性皮膚炎に、皮膚の感染症を起こしたらどうなりますか?

A:アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が弱くなっているので、感染症を起こしやすく、また悪化しやすくなります。特に問題になるのは、黄色ブドウ球菌による「とびひ」、伝染性軟属腫(いわゆる「みずいぼ」)、ヘルペスウイルスによる「カボジ水痘様発疹症」です。アトピー性皮膚炎の湿疹とは違った皮膚病変が出ますので、おかしいなと思ったら、医療機関で診てもらいましょう。

Q:「アトピー」とはそもそもどういう意味ですか?

A:ギリシャ語で「場所」を意味する、「トポス (topos)」という単語があります。この単語の先頭に否定を意味する”a”がついた「アトポス(atopos)」は、「場所がない」、「場所が限定されない」というような意味になり、これがアトピーという言葉の元になっています。体の一部分だけでなく、広い範囲に同時に発疹が出るアトピー性皮膚炎の特徴をあらわした病名なのです。ちなみにアトピー性皮膚炎は、英語では“atopic dermatitis”といいます。

Q:「アトピー素因」とは何ですか?

A:IgE抗体によるアレルギーを起こしやすい体質のことを「アトピー素因」とよんでいます。アトピー性皮膚炎の患者さんの多くはアトピー素因を持っています。将来的にアトピー性皮膚炎以外のIgE抗体によって起こるアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎)になる可能性が高いです。これを予防するためにも、アトピー性皮膚炎の治療をしっかりと行うことが重要です。

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