HPVワクチン(子宮頸癌ワクチン)

 HPVワクチンとは、子宮頸癌を起こすヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンです。国内では、毎年、約3000人の女性が子宮頸癌で死亡しています。初めての性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することで、子宮頸癌が88%減ったというデータがスウェーデンから出ています(N Engl J Med 2020;383:1340)

 大久保駅前・林クリニックでは、9価HPVワクチン(シルガード9)の接種を行っています。多くのお嬢さんにHPVワクチンを接種していただき、近い将来、子宮頸癌に苦しむ方が減るよう願っています。

 男性には4価HPVワクチン(ガーダシル)の接種ができます。2024年4月から、公費助成制度が開始され、新宿区在住の小学6年~高校1年生の男子は、無料で接種できるようになりました。男子へのHPVワクチン接種の意義についての解説を参考にしてください。

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副作用についての解説Q&Aコーナー:HPVワクチンの副作用が心配なのですが、大丈夫ですか?

定期接種で9価ワクチンが接種できます

 HPVにはいくつかの型があります。そのうちHPV 6型、11型、16型、18型の4種類に感染予防効果がある4価ワクチン(ガーダシル)と、さらに5種類(31型、33型、45型、52型、58型)もカバーする9価ワクチン(シルガード9)があります。2023年4月から、定期接種に9価ワクチン(シルガード9)が使用できるようになりました。

 このうち、もっとも医学的に重要なのはHPV 16型と18型で、この2種類だけで子宮頸癌の約7割の原因になっています。HPV6型と11型は、尖圭コンジローマという性感染症の原因であり、子宮頸癌を起こすことはありません。さらに5種類のHPVもカバーした最新の9価ワクチンは、子宮頸癌の約9割を占めるHPVの感染を予防できます。

 HPVワクチンは、小学校6年生から高校1年生の女子を対象とした定期接種となっており、無料で接種できます。また、定期接種の期間を逃してしまった方への救済措置(キャッチアップ接種;対象は1997年4月以降生まれの方)にも公費助成がなされています。対象者には、お住まいの市区町村から予診票が送付されています。

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性交渉を始める前に、接種を完了させましょう

 HPVは基本的に性交渉で感染します。HPVワクチンは、すでに感染が成立してしまっているHPVには効果がありません。つまり、HPVワクチンの効果が最も大きいのは、性交渉を始める(セクシャルデビュー)前に3回の接種を完了した場合です。

 小学校6年生から定期接種が受けられます。高校生、大学生ともなると、親御さんの目も行き届かなくなります。ワクチン接種を先延ばしにしていると、結局、接種するチャンスを逃す可能性もあります。親の言うことを聞かなくなる年齢になる前に、なるべく早くHPVワクチンの接種を完了させましょう。

HPVワクチンは合計3回 接種します

 HPVワクチンは、合計3回の接種が必要です。1回目の接種の2ヶ月後に2回目を、そのさらに4ヶ月後(つまり1回目の接種から6ヶ月後)に3回目を接種して完了となります。

 15歳未満の方に限り、3回ではなく、2回だけの接種でもよいことになっています。これは、13~14歳までに、HPVワクチンを2回接種した場合も、3回接種と比べて、少なくとも2~3年間は効果が劣らないというデータに基づいています(Vaccine 2017;35:2892-2901)。ただ、より長期の効果に差がないかは不明です。より長期の効果に関するデータは、これから出てくると思います。
 当院では、2回接種、3回接種のいずれにも対応可能です。副反応が軽減できますので、15歳未満の方には基本的に2回接種をおすすめするのが世界の流れのようです。2回接種の場合は、1回目の接種の6ヶ月後に2回目を接種します。2回接種と3回接種で、接種スケジュールが変わりますので、ご注意ください。

HPVワクチンを接種した方も子宮頸癌検診は必要です

 HPVワクチンは、子宮頸癌を予防する高い効果があります。しかし、HPVワクチンでカバーされない型のHPVに感染して子宮頸癌になる可能性はあります。HPVワクチンを接種した方でも、20歳を過ぎたら2年に1回は子宮頸癌検診を受けることがすすめられます。

参考:がん情報サービス

キャッチアップ接種 まだ間に合います!

 現在、定期接種の期間を逃してしまった方への救済措置として、1997年4月以降生まれの方を対象に、キャッチアップ接種が進められており、無料で接種できます。キャッチアップ接種の期限は2025年3月末まで、残り半年となりました。
 標準的な接種スケジュールでは、3回接種を完了するのに、6ヶ月かかります。しかし、1回目接種と2回目接種は1ヶ月、2回目接種と3回目接種は3ヶ月あければよいので、最短で4ヶ月あれば3回接種を完了できます。10月、11月になってから接種を開始しても、まだ間に合います!
 大久保駅前・林クリニックでは、都内23区発行の予診票をお持ちの方へのキャッチアップ接種に対応しています。キャッチアップ接種の期限が近づくにつれ、接種希望者が急増したため、ワクチンの供給が逼迫しており、当院では新規のWeb予約を停止しています。特段の事情があり、10月・11月にキャッチアップ接種をスタートしたい方は、電話でご相談ください。

大久保駅前・林クリニック【新宿区・大久保駅前の小児科・内科・循環器内科・アレルギー科】

JR総武・中央線 大久保駅から徒歩1分
大久保駅前・林クリニック

9価(シルガード9):東京23区の接種券をお持ちなら無料接種できます。自費の場合、税込1回33,000円です。
4価(ガーダシル):新宿区在住の小学6年~高校1年の男子は、公費助成あり!区役所に予診票を申し込んでから、Webで予約をおとりください。

Q&Aコーナー

Q:HPVワクチンの副作用が心配なのですが、大丈夫ですか?

A:2013年にHPVワクチンが定期接種となった後に、HPVワクチン接種後に体じゅうに痛みが生じる、手足に力が入らない、歩けなくなる、といった症状がみられたということが問題となりました。テレビや新聞でセンセーショナルに報じられたのを覚えている方も多いかもしれません。このため、HPVワクチンは定期接種であるにもかかわらず、対象年齢になっても自治体から接種券が送られない(接種したい人だけが自治体に申し出て接種券を送ってもらう)という措置がとられました。
 大規模な調査の結果、広範な痛み、手足の脱力、歩行不能などの症状が出る頻度は、HPVワクチン接種とは無関係であることが明らかになっています (Papillomavirus Research 2018;5:96-103)。
 HPVワクチンの接種対象となる小学校6年生~高校生という年齢は、多感な時期であり、精神的にも不安定な時期です。HPVワクチンが接種されるよりも昔から、思春期に原因不明の多彩な症状を訴える患者さんはいらっしゃいました。予防接種は痛みや恐怖を伴います。予防接種をきっかけに心身の不調を感じることもあり、これを「予防接種ストレス関連反応」といいます。痛みの治療の専門家(麻酔科の先生が得意とすることが多いです)や、子どものこころの専門家(児童精神科や小児神経科)で時間をかけて診てもらうことで、思春期特有の心身症の患者さんの症状が落ち着いて、日常生活を支障なく送れるようになることは、私を含め、多くの小児科医が経験しています。
 HPVワクチンの子宮頸癌予防効果は明確であり、ぜひとも多くの方に受けていただきたいと思います。HPVワクチンの公費助成(無料接種)は、小学校6年生から高校1年生までの4学年の間が対象です。十分な期間がとられていますので、慌てる必要はありません。まず、お子さんご自身がHPVワクチンの意義をよく理解してください。その上で、受験前や進学直後といった精神的なストレスがかかる時は避け、体調の良いときに接種をしましょう。1回目接種の2ヶ月後に2回目、さらに4ヶ月後に3回目の接種をするのが標準的ですが、体調によっては2回目・3回目の接種を遅らせても全く問題ありません。合計で3回接種できれば、しっかりと効果が得られます。

参考:厚生労働省によるHPVワクチンの情報

Q:4価ワクチンを3回接種済ですが、改めて9価ワクチンを接種することはできますか?

A:定期接種で4価ワクチンの接種を完了した方で、9価ワクチンを希望される場合、自費で接種することは可能です。4価ワクチンを規定どおり3回接種した後、改めて9価ワクチンを規定回数(3回)接種した場合、特に有害とはならず、また98%以上の人で9種類のHPV型すべてに対する十分な抗体が得られることが分かっています(Vaccine 2015;33:6855)
 なお、9価ワクチンの方が効果が高いことは事実ですが、性交渉開始(セクシャルデビュー)前に接種を完了していれば4価ワクチンでも十分な効果が期待できます。HPVで医学的に最も重要なのは、16型と18型で、この2種類だけで子宮頸癌の約7割の原因を占めます。16型・18型は、4価ワクチンでも9価ワクチンでもカバーされています。

Q:4価ワクチンを1回(あるいは2回)だけ接種しました。残りの回数は、9価ワクチンを接種してもよいですか?

A:問題ありません。4価ワクチンを途中まで接種している場合、残りの回数を9価ワクチンに切り替えて接種(「交互接種」といいます)することが可能です。これは、定期接種、キャッチアップ接種でも認められています。

Q:HPVワクチンは成人でも接種する意味がありますか?

A:HPVワクチンはすでに感染が成立しているHPVには効果はありません。しかし、HPVワクチンがカバーしている9種類のHPVのうち、まだ感染が成立していないウイルスに対する感染予防効果はあります。性交渉の経験のある成人でも、引き続き性交渉をすることがある限り、HPVワクチンを接種する意味はあると言えます。未感染の型のHPVへの感染を予防する効果は期待できるからです。もちろん、HPVワクチンを接種しても、定期的な子宮頸癌検診は必要です。当院では、臨床的な有効性を踏まえ、45歳未満の方には自費で接種を行います。

Q:男性でもHPVワクチンを接種する意味がありますか?

A:4価ワクチン(ガーダシル)は、9歳以上の男子も接種できます。男性の肛門癌、中咽頭癌、陰茎癌の一部は、HPVが原因です。例えば、肛門癌の90%、陰茎癌の40%はHPVが原因です(J Adolesc Health 2010;46:S20)。男性でもHPVワクチンを接種すれば、これらの癌の予防効果があります。また、男性がHPV感染を予防することで、パートナーにHPVを感染させる危険が減る効果もあります。
 海外では、男性にも9価ワクチンを接種しています。残念ながら、日本では、男性への9価ワクチン(シルガード9)の接種は、国の薬事承認が得られていません。ただ、男性に生じるHPVによる癌の大半が4価ワクチンでカバーできると考えられていますので、4価ワクチンの接種でも医学的には十分な効果が期待できます。例えば、HPVが原因となる肛門癌の82%は4価ワクチンでカバーできるのに対し、9価ワクチンだとカバー率は88%となり、その差はわずか6ポイントです(Int J Cancer 2015;136:98-107)。肛門癌の場合は、HPV 16型がもっとも発癌性が高く(Lancet Infect Dis 2018;18:198)、これは4価ワクチンでカバーできます。
 2024年4月から、公費助成制度が開始され、新宿区在住の小学6年~高校1年生の男子は、ガーダシルを無料で接種できるようになりました。接種を希望する方は、新宿区保健予防課に予診票を申し込んでください。

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