伝染性紅斑は、5~15歳の子どもにみられる感染症です。パルボウイルスB19というウイルスによって起きる病気です。ほっぺたが赤くなることから、「リンゴ病」とも呼ばれます。かわいらしい病名ですが、いったいどのくらい危険のある病気なのでしょうか?
ほっぺたが赤くなった時点で、他人に感染させる危険はゼロ
伝染性紅斑の原因となるパルボウイルスB19は、感染してから7~11日くらいで、鼻水や発熱を引き起こします。鼻水からはウイルスが排出されています。この段階では、風邪と見分けがつきません。さらにその1週間後くらいに、ほっぺたが赤くなり、手足にも赤い発疹が広がっていきます。これが伝染性紅斑です。赤い発疹は、網目状になっていることが特徴で、「レース状紅斑」と呼ばれています。発疹は1~3週間くらい、増えたり減ったりしながら、自然に治ります。特別な治療は不要です。
伝染性紅斑の症状は、ウイルスそのものによる症状ではなく、ウイルス感染後の免疫反応による症状です。ほっぺたや手足に赤い発疹が出た段階では、すでにウイルスは排出されておらず、他人に感染させる危険はありません。症状が発疹だけなら、登園や登校は可能です。
なお、パルボウイルスB19に感染しても、まったくの無症状で終わることもかなり多いです。大人では50~80%の方が感染済みです。
パルボウイルスB19は赤血球を破壊してしまう
パルボウイルスB19は、作られたばかりの幼若な赤血球に感染して、それを破壊してしまいます。赤血球は、新しいものが絶え間なく作られています。健康な人なら、パルボウイルスB19で赤血球が多少破壊されても、なんの症状も出ません。
溶血性貧血という血液の病気がある人がパルボウイルスB19に感染すると、貧血になることがあります。溶血性貧血では、もともと赤血球の寿命が短くなっているため、パルボウイルスB19が赤血球を破壊すると、赤血球の産生が追いつかなくなってしまうのです。
また、妊婦さんがパルボウイルスB19に感染すると、お腹の中の赤ちゃんが胎児水腫という病気になることがあります。胎児は、まだ赤血球が十分にプールされていないので、パルボウイルスB19が赤血球を破壊してしまうと、途端に貧血を起こします。赤血球は、酸素を運搬する役割があります。全身に十分な酸素を送るため、貧血になった胎児の心臓は、いつもより頑張って収縮して血液を送り出します。ところが、心臓が疲れてしまうと、胎児の身体がむくんでしまうのです。これが胎児水腫です。
妊娠中に感染した疑いがあるときは、胎児エコー検査でフォローしてもらおう
妊婦さんが、パルボウイルスB19に感染して、赤ちゃんが胎児水腫になっても、多くの場合は回復して、元気に生まれてきます。頻度は少ないものの、胎児の発育不全や、胎児死亡を起こすこともあります。重症の場合は、胎児輸血などの胎児治療が必要になることもあります。
ウイルスを排出している時期は、風邪と区別が付かないので、パルボウイルスB19への感染を予防することは現実的には困難です。ほっぺたが赤くなった時点では、すでに他人に感染させる時期は終わっています。もし、妊娠中に、上のお子さんが伝染性紅斑になった場合、産科の先生にその事実を伝えましょう。妊婦健診で、胎児のエコー検査を行うときに、胎児水腫の徴候がないかチェックしてもらいます。胎児水腫がなければ心配いらないですし、万が一、その徴候があれば注意深くフォローして適切なタイミングで治療につなげてもらえます。
Q&Aコーナー
Q:伝染性紅斑を診断する検査法はあるのですか?
A:パルボウイルスB19に対するIgM抗体価を測定することで、急性期の診断ができます。ただ、健康保険で検査ができるのは、妊婦のみです。
パルボウイルスB19に初めて感染すると、すぐに抗B19-IgM抗体が上昇し、感染後6~8週間持続します。発疹が出ている時期に血液検査をして、抗B19-IgM抗体が陽性なら、伝染性紅斑と診断できます。多くの人にとって、伝染性紅斑は自然に治る病気なので、血液検査を行う意義は乏しいです。妊婦で発疹がある場合のみ、保険適用となります。