感染性心内膜炎

わたしたちのからだでは、バイキンが血管の中に時々入りこんでしまうことがあります。わたしたちのからだには、体外から侵入してきたバイキンなどと戦うしくみ(免疫)があり、たいていのバイキンは病気を起こすことなく消えてしまいます。

ところが、運悪く、バイキンが免疫のしくみをすりぬけて、心臓までたどり着いてしまうことがあります。心臓にたどりついたバイキンは、心臓の内側の組織(心内膜)にくっついてバイキンの数を増やします。心臓はからだじゅうに血液を送り出していますから、バイキンも全身に広がってしまいます。これが感染性心内膜炎という病気です。

バイキンが心臓の中にくっつくと、感染性心内膜炎になる

感染性心内膜炎になると、熱が出て、何日も熱が続きます。からだをだるく感じ、食欲もなくなります。感染性心内膜炎の治療のためには、抗菌薬(バイキンが増えるのをおさえる薬)の注射を1ヵ月以上も続けなくてはなりません。感染が進むと、バイキンのかたまりが心臓の弁を壊してしまう場合があり、手術が必要になることもあります。
心臓に病気がない人に比べると、心臓に病気がある人は、感染性心内膜炎にかかる危険が高くなります。その理由は、心臓の壁に穴があいていたり、心臓の弁にせまいところや逆流があると、血液が勢いよく心臓の壁にぶつかって、心内膜が傷むからです。傷んだ心内膜にはバイキンがくっつきやすいのです。

感染性心内膜炎の一番の原因は口の中のバイキン

心臓の病気をみてもらっているお医者さんに、「歯みがきをしっかりしなさい」と言われたことはありませんか?これは、口の中のバイキンが感染性心内膜炎の原因として一番多いからです。心臓に病気がある場合は、感染性心内膜炎の危険を減らすために、口の中をきれいに保っておくことが大切です。

口の中には、500種類以上のバイキンが2000億匹も住んでいると言われています。これは毎日歯みがきをしている場合で、歯みがきがきちんとできていない人は、もっと多くのバイキンがいます。しかも、歯みがきがきちんとできていないと、歯ぐきが弱くなって、血が出やすくなり、バイキンが血管に入り込んで感染性心内膜炎が起きる危険が高くなります。

ふだんからしっかり歯みがきをして、口の中をきれいに保つことで、感染性心内膜炎の危険を減らすことができます。

歯医者さんにかかるときは、心臓の病気があることを伝えよう

血が出るような歯の治療をしたときには、口の中のバイキンが血管に入って感染性心内膜炎が起きる危険があります。心臓の病気の種類によっては、感染性心内膜炎を防ぐために、歯の治療をする1時間前に抗菌薬(バイキンが増えるのを抑える薬)を飲まなくてはいけません。

心臓の病気をみてもらっているお医者さんに、自分の病気がこれにあてはまるかどうか聞いておきましょう。そして、歯医者さんにかかるときには、「○○という心臓の病気があるので、血が出る治療をするときは、治療の前に抗菌薬を飲むように言われています」と伝えてください。

また、抗菌薬の処方が必要な場合は、当院でお出しできます。ご相談下さい。

予防内服のための抗菌薬

アモキシシリン(商品名:サワシリン、パセトシンなど)

こども: 1回 50 mg/kg (体重10 kgなら1回500 mg)

おとな: 1回 2 g

歯科治療の60分前に飲む!

日本循環器学会:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)より

Q&Aコーナー

Q:心臓に病気があると、熱を出す度に感染性心内膜炎を心配しないといけないのですか?

A:いいえ、そんなことはありません。心臓に病気があると感染性心内膜炎になる危険が高いといっても、年間の発症率は、0.1%未満に過ぎません1)
感染性心内膜炎を心配なければいけないのは、熱が1~2週間も続くとか、もらった抗菌薬をのんだら熱が下がったのに止めたとたんに熱が出るとか、体重が減ってやせこけてくるとか、風邪にしてはおかしな症状が続く場合です。

1) BMJ 2017;358:j3776

Q:心臓の病気によって感染性心内膜炎にかかる危険は違うのですか?

A:はい、心臓の病気の種類によって、感染性心内膜炎にかかる危険性には違いがあります。
例えば、心房中隔欠損(ASD)の患者さんは、心臓の病気がない人と比べても、感染性心内膜炎になる危険には差がありません。
 逆に、心臓の病気のなかでも、感染性心内膜炎にかかる危険が高いのは、①人工弁が入っている人、②チアノーゼのある先天性心疾患の人、③感染性心内膜炎にかかったことのある人、です。

Q:感染性心内膜炎の原因の大半が、歯の治療のときの出血なのですか?

A:いいえ、そうではありません。
 感染性心内膜炎にかかった大人の患者さんのデータですが、発症前の3ヵ月間に歯の治療(血が出る治療)を受けたことがあった人は、わずか5%でした1)。むしろ、感染性心内膜炎の原因の多くは、ふだんのちょっとした口の中の出血だと考えられています。ですから、毎日しっかり歯みがきをして、口の中をきれいに保っておくことが大切なのです。
 他には、心臓の手術が感染性心内膜炎の原因となることもありますので、手術後6ヵ月以内の発熱には注意が必要です2)

1) BMJ 2017;358:j3776, 2) Circulation 2013;128:1412

Q:ケガをして膝から血が出たときも、感染性心内膜炎を予防するために抗菌薬を飲む必要がありますか?

A:いいえ、その必要はありません。
 血が出てから抗菌薬を飲んでも予防になりません。予防のためには、血が出る1時間前に抗菌薬を飲んで、ケガをしたときに抗菌薬がいちばん効いている状態にしておかなくてはなりません。1時間後にケガをすると予測できる人はいないでしょうから、予防のために抗菌薬を飲むことはできません。
 傷を流水でよく洗う、消毒する、ばんそうこうを貼る、といったケガに対する一般的な処置をおこなって、様子を見て下さい。
 もちろん、ケガの程度がひどくて、ケガの治療のために抗菌薬が必要になることがあります。

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