離乳食開始前にアレルギーの血液検査は必要か?

 原因となる食べ物を食べてから30分以内程度の短い時間でじんましんが出るアレルギー反応を、即時型アレルギーといいます。じんましん以外にも、嘔吐や下痢、腹痛、喘息のようなゼーゼーした呼吸がみられることもあります。重症だと呼吸困難に加えて血圧が下がって意識を失って倒れてしまうことがあり、これをアナフィラキシーショックと呼びます。

 即時型アレルギーは、アレルギーの原因となる食物に反応するIgE抗体というタンパク質が原因で起こります。それぞれの食物ごとに、血中のIgE抗体を測る検査があります。これが特異的IgE抗体というアレルギーの血液検査です。

離乳食開始にあたり、アレルギーの血液検査は、必須ではありません

 特異的IgE抗体が検出されたからといって、必ずしもアレルギー反応を起こすとは限りません。原因となる食べ物を食べてみて、実際に症状が出るかどうか確認しないと、アレルギーの診断はできません。さらに、特異的IgE抗体が検出されても、赤ちゃんが重い即時型アレルギーを起こすことはほとんどありません。

 赤ちゃんに多い食物アレルギーの原因となる食べ物には、牛乳、小麦、ピーナッツなどがあります。離乳食が本格的に始まる生後6ヶ月から、こういったアレルギーを起こしやすい食材も含め、順次、与え始めましょう。

 万が一、即時型アレルギーを起こした場合にもあわてないように、初めて食べさせる食材を使う時は、少量から始めましょう。食べさせる時間も、お医者さんに診てもらいやすい午前中が良いでしょう。初めての食材は1種類ずつ試していけば、アレルギーを起こした場合も原因が特定しやすいですね。

アレルギーの血液検査が役に立つのはどんな場合?

 生後1~4ヶ月の時に、皮膚に強い湿疹が出ていた赤ちゃんは、食物アレルギーになる危険が高いと言われています。あるいは、卵アレルギーを実際に発症した場合、ピーナツアレルギーも起こす危険が高くなります。食物アレルギーになる危険が高いと予想される赤ちゃんでは、どのように離乳食を進めていくか、親御さんは悩まれるでしょう。このような場合は、アレルギーの血液検査を受けることで、離乳食を安全に進める方法を、お医者さんと一緒に考えることができます [1]。特異的IgEが検出されなかった場合は、その食べ物に対するアレルギーを起こす可能性は非常に低いと言えるのは、親御さんにとって大きな安心材料になるでしょう。

 ただし、特異的IgE抗体が検出されても、全員が食物アレルギーを起こすわけではありません。検出された特異的IgE抗体の量や種類によって、少量から食べさせていくこともありますし、より詳しい検査をした上で食事制限をすることもあります。親御さんの自己判断で、むやみに制限することのないようにしてください。

卵やピーナツは早くから食べさせたほうが、アレルギーになりにくい!

 生後6ヶ月から積極的に卵やピーナツを食べさせると、その後に卵アレルギーやピーナツアレルギーになることを予防できることが分かっています[2, 3]。これは離乳食開始時点で、特異的IgE抗体が検出された赤ちゃんにもあてはまります。血液検査で特異的IgEが検出されたことを理由に、卵やピーナツを食べさせないままでいると、かえってアレルギーになりやすいのです。

参考文献:[1] Lancet Child Adolesc Health 2020;4:526, [2] J Allergy Clin Immunol 2010;126:807,
[3] N Engl J Med 2015;372:803

Q&Aコーナー

Q:なぜ、生後4ヶ月までに湿疹がひどかった赤ちゃんは、食物アレルギーになる危険が高いのですか?

A:赤ちゃんが普段生活している環境には、卵やピーナツなどの成分(抗原といいます)が微量ながら存在します。これが、赤ちゃんの皮膚から体内に入ると、免疫反応が起きて特異的IgE抗体が作られ(感作といいます)、やがて食物アレルギーを起こすのです。湿疹・アトピー性皮膚炎があると、赤ちゃんが食物抗原に感作されやすく、食物アレルギーになる危険が高くなります。
 湿疹やアトピー性皮膚炎は、早い段階からしっかり治療して、スキンケアにより皮膚を良い状態に保つことが、食物アレルギーの予防にもなります。

Q:お母さんが、妊娠中や授乳中に卵を食べないようにすれば、子どもが卵アレルギーになるのを防げますか?

A:お母さんが妊娠中・授乳中に卵を食べないようにしても、子どもの食物アレルギーを予防することはできません。いくつかの研究で、妊娠中・授乳中の女性が卵や牛乳を食べないようにしても、生後6ヶ月~1歳半の時点で、子どもが卵や牛乳に感作する頻度は減らないことが分かっています(Evid Based Child Health 2014;9:447)。

関連記事

  1. 不登校は起立性調節障害のせいかもしれない

  2. 子どもの気管支喘息

  3. 赤ちゃんの向き癖

  4. ビタミンDとカルシウム

  5. 伝染性紅斑(リンゴ病)

  6. 夜尿症(おねしょ)

PAGE TOP