牛乳アレルギーの原因となるのは、牛乳に含まれるカゼインとラクトアルブミン(ホエイタンパクとも呼びます)の2種類のタンパク質です。これらは粉ミルクの成分でもありますから、ミルクアレルギーと呼ぶこともあります。
体重が適切に増えているかどうかをチェック
牛乳アレルギー/ミルクアレルギーは、生後早期から1歳までに発症します。症状は、嘔吐、下痢、血便、便秘といった消化器症状が中心で、長期に続くと、体重がなかなか増えないことにもつながります。アトピー性皮膚炎がみられることもあります。
症状の出方は、母乳栄養が中心で粉ミルクをたまにしか与えないか、毎日粉ミルクを与えているかで、違います。たまにしか粉ミルクを与えない場合、ミルクを飲んだときに限って、その1~4時間後に激しく嘔吐して、ぐったりするという症状が出ます。少ししてから下痢になります。毎日、ミルクを与えている場合は、水のような下痢や血便が続き、体重がなかなか増えません。嘔吐も時々みられます。すぐ症状が出るわけではないので、この症状の原因が食物アレルギーだとはなかなか気づかないことも多いです。しかも困ったことに、消化器症状が中心のアレルギーは、細胞性免疫が関わっており、特異的IgE抗体を調べる血液検査や皮膚プリックテストでは診断ができません。
ミルクアレルギーが心配な場合、まず、体重が適切に増えているかをチェックしましょう。母子手帳に載っている体重増加曲線を描いてみて下さい。体重が正常範囲内で、かつ増え方も極端に悪くなければ、あわてなくても大丈夫です。嘔吐、下痢、血便といった症状が、繰り返しみられる場合は、早めにお医者さんにみてもらって下さい。
母乳栄養またはアレルギー治療用のミルクに切り替えることが、診断にも治療にもなる
診断のためには、一度、ふだん使っている粉ミルクを完全に止め、母乳かアレルギー治療用のミルクに換えます。2~4週間くらいして症状が良くなれば、ミルクアレルギーの可能性が高いと言えます。再び普通の粉ミルクに戻して、症状が再発すれば、まず間違いなくミルクアレルギーと診断できます。
治療としては、母乳かアレルギー治療用のミルクを続けてもらうことになります。母乳を与える場合は、お母さんも乳製品を控えてもらいます。アレルギー治療用のミルクには、牛乳に含まれるタンパク質を分解して小さくした加水分解乳(森永乳業ニューMA-1など)を用います。それでも症状が改善しない重症のミルクアレルギーでは、タンパク質をアミノ酸にまで分解したアミノ酸乳(明治エレメンタルフォーミュラ)を用います。残念ながら味が悪いのですが、早期から使えば、赤ちゃんは抵抗なく飲んでくれるようです。栄養のバランスに注意が必要なので、必ず医師の指示に従って下さい。
ミルクアレルギーは子どものうちに治ることが多い
5歳くらいまでに、半分くらいの子どもは牛乳アレルギー/ミルクアレルギーが治ると言われています。ミルクアレルギーと診断された場合も、1年ごとにまだアレルギーを起こすかどうかの検査をしながら、制限を解除していきます。
参考文献:J Investig Allergol Clin Immunol 2017;27:1, Eur J Pediatr 2015;174:141
Q&Aコーナー
Q:牛乳・ミルクアレルギーでは、特異的IgE抗体を調べる意味はないのですか?
A:牛乳・ミルクアレルギーは消化器症状が多く、IgE抗体とは無関係のアレルギー反応で起こります。しかし、ミルクを飲んですぐの嘔吐や、じんましん、喘息を主症状とする場合は、IgE抗体の関与する即時型アレルギーが疑われます。このような患者さんでは血液検査で特異的IgE抗体を調べることは、診断の手がかりとなります。
また、牛乳・ミルクアレルギーは小学校に入る年齢までに治ることが多いですが、赤ちゃんの時の特異的IgE抗体が少ないほど治る可能性が高いことが分かっています(J Allergy Clin Immunol 2013;131:805)。ミルクの特異的IgE抗体が 2 UA/mL未満(クラス1~2相当)なら7割くらいは治るようです。
Q:ミルクアレルギーの赤ちゃんの離乳食はどうやって進めればよいでしょうか?
A:牛乳アレルギー/ミルクアレルギーの赤ちゃんでも、他の赤ちゃんと同じように、生後5~6ヶ月ごろから離乳食を開始して構いません。アレルギーを起こしにくい、野菜(ブロッコリ、カブ、カボチャ)や果物(モモ、メロン)から始め、豆類や肉類へと食べさせるものを広げていきましょう。万が一、アレルギーを起こした時に原因が分かるよう、初めて食べさせる食材は、1回に1種類とするのが良いです。ミルクアレルギーがあると、最大で40%の方が、大豆に対しても同じようなアレルギーを起こすことがあるといわれています。心配がある場合は、ぜひお医者さんに相談してください。また母乳だけを飲ませている場合は、生後半年ごろからは貧血にも注意が必要です。
Q:牛乳アレルギーがあると、クッキーやバターなどの加工食品も食べられないのでしょうか?
A:例えばバターは、牛乳を濃縮して作るので、タンパク質の含有量は牛乳の1/5くらいになります。牛乳が15 mL飲めるのであれば、バターに換算すると75 gくらいになりますので、常識的な量のクッキーを食べても問題ないはずです。ヨーグルト、チーズなども同様の考え方で、換算します。