過敏性腸症候群

 過敏性腸症候群は、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)を行っても、特に異常がみつからないのに、何ヶ月もの間、何回も腹痛を起こし、同時に下痢や便秘といった便通の異常がみられる病気です。検査で異常がないといっても、症状は強く、患者さんの日常生活に支障が出てしまうことも多いです。決して軽くみることはできない病気です。

症状は慢性的に繰り返す腹痛と、下痢や便秘で、日常生活に支障

 過敏性腸症候群は、患者さんから症状を詳しく教えてもらうことで、診断ができます。内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を全員に行う必要はありません。症状でお困りの方は、気軽に医師に相談してください。

 主な症状として腹痛があり、3~6ヶ月にわたって、最低でも週1回、日常生活で困るレベルの腹痛が起こります。腹痛はずっと続くのではなく、断続的に痛くなったり良くなったりします。下痢になることもあれば、便秘になることもあり、このような便通の異常は腹痛と同じタイミングで出現します。お腹が張った感じ(腹部膨満感)を訴える方もいます。

 他の症状として、全身的な不調(頭痛、疲れやすさ、だるさ)もみられます。気分が沈んだり、うつ状態になる方もいます。精神的なストレスが関連していることも多く、不安や緊張を感じる場面でお腹の症状が出やすいです。逆に、寝ている間はお腹の症状は出ないことが特徴とも言えます。

 急性胃腸炎(ノロウイルス感染など)のあとに、発症してしまうこともあります。

使える薬の種類は多いが、効き目には個人差があるので、医師と相談しながら薬を選ぼう

 便通の異常に対しては、便秘・下痢のどちらの症状が強く出ているかに応じて、薬を選びます。

 便秘には、便を軟らかくする浸透圧性下剤(マクロゴールなど)を使います。量を増やすほど、便が水分を含んで軟らかくなりますので、効き目をみながら量を増やせます。

 腸内で水分を吸収して便の水分バランスを整える作用がある膨張性下剤は、下痢、便秘のどちらも改善する効果があります。

 また、過敏性腸症候群では、自律神経のバランスの異常が背景にあるとの考えから、神経系に作用する薬が効くこともあります。大腸の動きを整えて下痢にも便秘にも効果がある非選択性オピオイド受容体作動薬(トリメブチン)、下痢に有効な5-HT3受容体拮抗薬(ラモセトロン)、便秘に有効な腸管分泌促進薬(リナクロチド)があります。これらの薬は大腸にある痛みを感じる神経を抑える効果もあり、腹痛も改善できます。

 過敏性腸症候群は、食事や、精神的なストレスも関連します。薬だけで治療するのではなく、規則的な生活をこころがけ、食生活の改善や、積極的に体を動かす習慣をつけることも同時に行いましょう。

低FODMAP食は試す価値あり

 FODMAPとよばれる発酵性の糖質は、腸から吸収されにくく、過敏性腸症候群を悪化させます。過敏性腸症候群で、特に腹部膨満感が強い患者さんは、FODMAPの少ない食物を摂ることで、症状の改善が期待できます。

 穀物であれば、米はFODMAPが少なく、小麦はFODMAPを多く含みます。したがって、主食はパン・めん類より、米飯を中心にするのがよいです。果物や豆類でも、種類によってFODMAPの量が異なりますので、インターネットで調べてみましょう。人工甘味料もFODMAPを多く含んでいますので、摂りすぎはよくないです。

参考文献 Irritable bowel syndrome. Lancet 2020;396:1675-1688

Q&Aコーナー

Q:内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が必要なのは、どんな場合ですか?

A:がんや炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)の可能性がある場合は、内視鏡検査が必要です。過敏性腸症候群では、便に血が混じることは通常はありません。血便がみられたり、血液検査で貧血や鉄欠乏がみられる場合は、内視鏡検査がすすめられます。また、大腸がんの発生頻度が増える50歳以上の方でがん検診をまだ受けていない場合や、家族にがんや炎症性腸疾患の患者さんがいる場合、6ヶ月で3 kg以上の体重減少があった場合も、内視鏡検査がすすめられます。

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