コレステロールと動脈硬化

健康診断で調べる「コレステロール」という言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。コレステロールとはいったい何でしょうか?コレステロールが高いとどんな病気になるのでしょうか?そして、高コレステロール血症に対してどのような治療があるのでしょうか?

LDLコレステロールは“余り物”の脂肪

脂肪は、筋肉のエネルギー源の一つとして大切な栄養素ですが、水には溶けません。脂肪はそのままの形では血流で運べないので、私たちの体では、脂肪を中性脂肪やコレステロールという物質に変え、それをリン脂質とアポ蛋白で取り囲んで「リポ蛋白」という粒にして運びます。このリポ蛋白は目的別に5種類あるのですが、そのうちの「LDL」は、エネルギーとして必要な中性脂肪を配り終わった残りを運ぶリポ蛋白です。これは、いわば余り物の脂肪です。たくさん血液中にあると、動脈血管の壁にくっついて変性させ、動脈硬化をおこしてしまうのです。健康診断の時に血液検査で調べるのは、LDLと結合したコレステロール(LDLコレステロール)の血中濃度です。「LDLコレステロール」は「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。

血中LDLコレステロールが高いと動脈硬化が起きる

 動脈は全身に血液を送る血管です。動脈は、ただの管ではありません。動脈の壁には、平滑筋という筋肉があって縮み具合を調節したり、血液が固まらないような物質を作って放出したり、細菌が侵入してきたら白血球を呼び寄せる物質を出したりと、じつに様々な仕事をしています。動脈の壁に、LDLがくっついて入り込むと、動脈壁の細胞は、LDLを異物だと判断して、白血球を呼び寄せ、やってきた白血球はLDLを飲み込んで閉じ込めます(この白血球の働きによる一連の流れを「炎症」といいます)。これを何十年も繰り返しているうちに、動脈壁の中に脂肪や白血球の残骸のかたまり(プラーク)ができ、血管がその分、狭くなってしまいます。これが動脈硬化です。

 血管が狭くなって血流が減ったり、プラークが突然はがれて血管が詰まったりすると、心筋梗塞や脳梗塞、腎障害が起こります。血管の壁が弱くなって、こぶ状にふくらむと動脈瘤となり、これが破れると動脈瘤破裂といって体の中で大出血が起きてしまいます。LDLコレステロールの値が高すぎることにより動脈硬化が起き、いろいろな病気につながるのです。

コレステロールを下げる薬「スタチン」で、動脈硬化を予防する

 動脈硬化を起こしてしまった血管を、元通りになおすことはできません。はがれやすいプラークをあらかじめ見つけて、血管が詰まらないような防止策をとることも難しいです。大切なのは、動脈硬化にならないように、あるいは今以上に進行しないようにすることです。

 LDLコレステロールの正常値は、120 mg/dL未満です。LDLコレステロールが140 mg/dLを超えると高コレステロール血症であり、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の危険が高まります。血中LDLコレステロール値を下げるスタチンという薬は、心血管疾患を大きく減らす効果があることが、多くの研究で分かっています。
心血管疾患のリスクに応じて、LDLコレステロール値の目標が設定されています。心血管疾患を起こしたことのある方や、糖尿病・高血圧など複数の危険因子がある方は、100 mg/dL以下まで下がることを目標にします。心血管疾患を起こしたばかりで、しかも糖尿病、腎不全、喫煙習慣があるなど、特に危険の高い場合には、70 mg/dL以下という厳しめの目標を設定します。

 目標値まで下がるように、スタチン(商品名:メバロチンやリピトールなど)を処方して治療します。スタチンだけでは効果が不十分な場合は、ゼチーアという別の種類の薬を追加すると良いようです。

Q&Aコーナー

Q:高コレステロール血症以外に、動脈硬化による心血管疾患の危険を高める病気はありますか?

A:「糖尿病」と「高血圧」です。
 糖尿病の患者さんでは、血管の壁にたまったLDLに糖がくっついてさらに変性し、血管の壁により強い炎症を起こし、動脈硬化が進行しやすくなります。糖尿病の患者さんでは、糖尿病の治療そのものも大切ですし、高コレステロール血症の治療もしっかり行わねばなりません。
 高血圧の患者さんでは、動脈の壁に強い力がかかります。特に血管が分岐するところでは、歪んだ力がかかり、動脈壁の細胞の働きが悪くなって、プラークができやすくなります。血圧を下げる薬は、効果の優れたものがたくさんありますから、高血圧の治療もしっかりと行いましょう。

Q:生活習慣では、どんなことに気をつけるべきですか?

A:とにかく禁煙して下さい。肥満と運動不足にも気をつけましょう。
 喫煙すると、吸い込む煙に含まれる様々な物質が、血管で炎症を起こし、動脈硬化を進行させます。それだけでなく、血が固まりやすくなったり、交感神経が常に刺激されたりすることにより、心血管疾患の危険も高めます。長い間、喫煙していた方でも、禁煙するのが遅すぎるということはありません。心筋梗塞を発症してから禁煙すれば、再び心筋梗塞を起こす危険は、非喫煙者と同じレベルにまで下がります(J Am Coll Cardiol 2009;54:2382)。今さら禁煙しても意味がない、などと思わないで下さい。
 肥満は、糖尿病になっていなくても、血糖値が下がりにくくなっている状態を作り出しており、動脈硬化を悪化させます。いうまでもなく運動習慣は非常に大切です。運動は、動脈硬化の進行を防ぐ効果があります。1日30分程度、やや速足で歩くだけでも、意味があります。

Q:高コレステロール血症の治療は、後期高齢者でも効果がありますか?

A:どんな年齢の方であっても、高コレステロール血症の治療には意味があります。最新の分析で、高コレステロール血症の治療薬を使ってLDLコレステロール値を下げれば、心血管疾患を減らす効果は、75歳以上の方であっても75歳未満の方と同等であることが分かっています(Lancet 2020;396:1637)。

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