フォンタン循環の患者さんも、積極的に遊びや運動を楽しもう!

 身体が必要とする酸素(酸素消費量)は、運動時に増え、それをまかなうために心臓が送り出す血液量(心拍出量)も増えていきます。健康な若者では、運動時の心拍出量は、最大で安静時のなんと5倍になります。フォンタン循環では、心臓が肺に血液を送り出すポンプの役割をしてくれません。フォンタン循環の患者さんは、運動時の心拍出量を、安静時の2倍程度までしか増やせないと言われています。そのため、耐えられる最大の運動強度(運動耐容能)は、心臓に病気がない人の7割弱くらいにとどまります。[1]

 こう言われると、運動はしない方がよいように思うかもしれませんが、実際は逆で、フォンタン循環の患者さんも、積極的に遊びや運動を楽しむべきなのです。

[1] Cardiol Young 2013;23:824

自分のペースで運動するなら問題なし!

 運動耐容能は、ルームランナーのような機械の上を走って測定します。強制的にスピードと傾斜を上げて、もうこれ以上は走れない!という限界が、運動耐容能になります。運動耐容能の範囲内であれば、持続的に身体を動かせるわけですから、フォンタン循環の患者さんが自分のペースで運動する分には問題ありません。

 また、子どもの日常的な遊びで、限界レベルまで運動強度が上がることはほとんどない(1日あたり2分未満[2])ので、同年代の子どもとの遊びや活動を制限する必要は全くありません[3]

[2] Health Rep 2011;22:15, [3] Pediatr Cardiol 2015;36:759

有酸素運動はいいことずくめ!フォンタン循環でも同じ!

 フォンタン循環の患者さんにとって、積極的に身体を動かすことには、3つの利点があります。

  1. フォンタン循環の小児や若者を対象にした複数の研究で、定期的に有酸素運動(軽いジョギングや自転車こぎ)を行うことで、運動耐容能が向上することが示されています[4]
  2. よく身体を動かした方が、筋量も増えます。ふくらはぎの筋肉が伸びたり縮んだりしてポンプのように血管を圧迫することで、足から血液を上へ押し戻します。フォンタン循環では、全身から戻ってきた血液がそのまま肺へ流れますから、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用が心拍出量を増やすことにつながります。この意味でも、適度な運動をして筋肉を維持することが重要です。
  3. 身体を動かすことを幼い頃から習慣づけておくと、大きくなっても運動の習慣を維持しやすく、それが肥満や高血圧などの生活習慣病の予防につながります

[4] Intl J Cardiol 2013;168:1779

1日1時間は思い切り身体を動かそう!

 週5日、1日あたり1時間は、思い切り身体を動かすのが理想的です[5]

 特別な運動でなくても問題ありません。家の掃除で床を拭いたりホウキで掃くなど、しゃがんだり歩き回ったりしてほどほどに息が弾むくらいなら、運動の強度としては十分ですから、外出が難しい場合は、お子さんに声をかけて色々なお手伝いさせるだけでも意味があります。

[5] Eur Heart J 2009;30:2915

Q&Aコーナー

Q:フォンタン循環で、運動に制限をしなければならないのはどんな場合ですか?

A:不整脈(脈の乱れ)がある場合は、運動により不整脈が悪化する可能性があるので、医師に相談しましょう。この場合も運動が全くできないというわけではありません。運動しながら心電図を記録したり、24時間心電図検査を行って、不整脈のリスクを見極め、適切な範囲内で運動してもらいます。

Q:プールは行ってもよいのでしょうか?

A:水遊び程度なら問題ありませんし、クロールや背泳ぎなどができるように泳ぎ方を習うのも問題ありません。うまく泳げるようになったら、長い距離をのんびり泳ぐのもよいです。
 ただし、本格的な競泳は避けて下さい。フォンタン循環では、心臓が肺に血液を送り出すポンプの役割をしてくれませんので、息を吸ったときに胸郭(肋骨と横隔膜で囲まれたスペースのことで、その中に肺があります)が広がることで肺血管に血液が引き込まれます。苦しいのを我慢して息をこらえると、肺に血が流れなくなってしまいます。

Q:標高の高いところで、ハイキングやスキーをしてもよいでしょうか?

A:平地で経皮酸素飽和度が90%以上ある患者さんなら、高地への日帰り旅行は可能で、ハイキングやスキーを楽しんでも問題ありません。フォンタン循環の患者さんを標高3454 mにあるスイスアルプスのリゾート地に連れて行って自転車をこがせたりして検査したところ、血行動態が悪化することはなかったというスイスの研究があります[6]
 高地にずっと住んでいる場合は、フォンタン循環の合併症の頻度が上がるという報告[7]もありますが、これは多くの人が標高1200~1400 mに住むアメリカのユタ州の話です。日本だと標高1000 mくらいに役場がある町村が、長野県や群馬県の山あいに数カ所あるだけですので、かなり特殊なケースと言えます。

[6] Heart 2016;102:1296, [7] J Am Coll Cardiol 2013;61:1283

Q:筋トレはやってもよいのでしょうか?

A:筋トレは可能ですが、重量挙げの選手がやるような、息を止めて力を入れるのは危険(怒責とかバルサルバ法といいます)ですので、避けて下さい。必ず呼吸を続けながら行うようにしましょう。実際にフォンタン循環の患者さんに筋トレをやってもらったら、運動耐容能が向上したという研究[8]もあります。

[8] Int J Cardiol 2013;168:780

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