朝、なかなか起きられない。午前中は調子が悪い。立ちくらみやめまいがする。思考力が低下してボーっとしている。子どもに、このような症状がみられた場合、起立性調節障害(起立性低血圧)という自律神経の病気かもしれません。起立性調節障害は、不登校の原因となることもあります。
起立性調節障害では、立ち上がった後の血圧低下が長く続いてしまう
横になった状態から立ち上がると、血液の一部が上半身から下半身へ移動し、血圧が下がります。通常は、自律神経の働きで体が瞬時に反応して、心拍数を増やしたり、血管を収縮させたりして、血圧を元に戻します。起立性調節障害では、この調節機構がうまく働かず、立ち上がった後に血圧の低下が長く続いたり、心拍数が異常に上がった状態が続いたりします。
自律神経の働きは、心理的な要因にも影響を受けます。新しい環境になじめずにつらい思いをしているときや、大きな失敗をしてストレスを感じたときに、起立性調節障害が発症したり悪化したりします。また立ちくらみやめまいを感じる不安から、不登校になることもあります。
飲み薬は2週間くらいすると効いてくる
起立性調節障害でよく使われるのは、ミドドリンという飲み薬です。これはα1受容体刺激薬といって、血管を収縮させて血圧を上げる効果があります。子どもでは、1回1錠を1日2回(起床時と夕方)飲んでもらいます。薬が効いてくるのには2週間くらいかかります。
また、日常生活では、立ち上がるときはゆっくりと、また長時間立っているときは時々足踏みをするなどして、血圧が下がらないようにしましょう。水分や塩分を多めに摂ることも有効です。できれば、昼間は横に寝転がらないように心がけましょう。
心理的なサポートも大切
起立性調節障害の重症度は、心理的な要因にも大きく影響されます。治療にあたっては、飲み薬だけでなく、不安の原因を取り除き、周囲の環境を整えることも大切です。
まず、起立性調節障害の症状は、子どもが自身がなまけているせいで起きているのではないことを理解してもらいます。学校生活や勉強、習いごとなど、全てをいきなり完璧にこなそうとはせず、できることから少しずつ始めていけるように、一緒に考えます。場合によっては、学校の先生に、遅刻を認めてもらうといった配慮をお願いすることも考えましょう。
失神を起こすこともある
起立性調節障害は、失神の原因になることもあります。学校の朝礼で、立って話を聞いているときに、意識を失って倒れてしまったのを見聞きしたことはありませんか?俗に「貧血で倒れた」とも言われますが、医学的には、血管迷走神経性失神とよびます。これも起立性調節障害の一種です。
治療には、ミトドリンの内服、水分・塩分摂取が有効です。倒れる前に、目の前が暗くなるなどの前兆があることが多く、すぐにしゃがんだり、足や腕を組んで力を入れるといった対応をすることで失神を回避できます。
Q&Aコーナー
Q:起立性調節障害はどうやって診断するのですか?
A:起立試験という検査をして診断します。10分以上横になった状態から、サッと立ち上がったときに、心拍数や血圧がどう変化するかを調べます。検査は、症状が出やすい午前中に行うのがよいです。
もちろん、症状が他の病気によるものではないかも確かめなくてはいけません。採血で貧血や電解質異常、甲状腺機能異常などがなかをチェックしたり、心電図や心エコーで心臓病がないかを調べます。