鼻血が出たら

 左右の鼻を分ける鼻中隔の前方には、細かい静脈血管がたくさん集まっています。ここは、鼻の穴に指を入れるとすぐに届く場所です。鼻をかんだり、鼻をほじったりするときに鼻中隔の粘膜が傷ついて、出血してしまうのです。鼻血のほとんどは、鼻中隔前方の静脈の出血です。アレルギー性鼻炎のある患者さんは、何回も鼻をかむため、鼻出血しやすくなります。

出血している側の鼻をつまんで、10分くらいおさえる

 鼻血がでたら、出血している側の鼻を手でつまみ、鼻中隔に押しつけます。10分くらい圧迫すればたいてい血が止まります。このとき、鼻血がのどにたれ込まないように、前屈みの姿勢で座るようにします。上を向いてはいけません。血がのどにたれこんできたら、吐き出しましょう。

 また、ティッシュや硬いガーゼを鼻の穴につめるのはおすすめできません。理由は、ティッシュやガーゼがさらに鼻の粘膜を傷つけるおそれがあるからです。ティッシュやガーゼを取り出すときに、鼻の粘膜に傷がつき、また鼻血が出てしまうこともあります。

止まりにくい鼻血は医療機関を受診

 圧迫止血をしても鼻血が止まらない場合は、医療機関を受診しましょう。血管収縮薬(薄めたエピネフリンなど)を浸したガーゼをつめて、血を止めます。サージセルRやスポンゼルRといった、止血剤を含んだ詰め物を使うこともあります。再出血を予防するために、数日間ほどトランサミンという止血薬をのんでもらうこともあります。トランサミンを投与することで、再出血の危険を減らすことができます(Cochrane Database Syst Rev 2018;12:CD004328)。

 再出血を防ぐためには、患者さんの協力も必要です。まず、鼻をほじったり、勢いよく鼻をかんだりすることのないように気をつけて下さい。息をこらえると頭部の静脈圧が上がるので、力仕事もしばらく避けましょう。鼻の中が乾燥していると、粘膜が傷つきやすいので、部屋を加湿するのも有効です。

特に注意が必要な鼻血とは?

 ほとんどの場合、鼻血が止まれば心配はいりませんが、他の病気が原因で鼻血が出やすくなっていることがあります。私は、全身の診察や、場合によっては血液検査で、他の病気が隠れていないかもチェックするよう心がけています。例えば、血液の病気で出血しやすくなるとか、がんの最初の症状ということもありえます。

 心臓病に対して血液を“サラサラにする”薬(抗血小板薬やワーファリン)をのんでいる方は、血が止まりにくい状態にあります。気づかないうちに貧血が進行していることもあります。このような患者さんが鼻血をくり返し起こす場合は、耳鼻科で鼻血に対して根本的な治療をしてもらう必要があります。

 また、頻度は多くありませんが、鼻中隔前方ではなく、鼻の奥の方の出血は、外から圧迫できないので、止血が難しいです。鼻血が気道にたれこんで呼吸困難になる可能性もあるので、耳鼻科での早急な処置が必要です。

参考文献:Clinical Practice: Epistaxis. N Engl J Med 2021;384:944-951

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