子どもの気管支喘息

気管支喘息は子どもでもおとなでもみられる病気ですが、ほとんどの患者さんが6歳までに発症します。乳幼児では、風邪などのウイルス感染がきっかけで喘息の症状が出ることが多く、おとなの喘息とは少し違った特徴があります。また、乳幼児は、症状が急速に進行することがありますので注意が必要です。体格が小さいので気道が狭く、さらに分泌物も多いためです。

発作が起きたときはβ2刺激薬で気管を広げる治療

口から吸った空気は、気管そして気管支を通って肺に送られます。この空気の通り道を気道と言います。気管支喘息では、発作的に気道がせまくなり、ヒューヒューという呼吸音がしたり、呼吸が苦しくなります。
喘息発作が起きてしまったときは、β2刺激薬の吸入で治療します。β2刺激薬は、気道の平滑筋の収縮を抑えて、気道を広げる効果があります。自宅での吸入は2回まで行ってもよいです。2回吸入しても症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

よく使われる吸入β2刺激薬には、サルタノールRメプチンエアーRなどがあります。スプレー式になっていて、発作が起きたときに吸入します。乳幼児にはベネトリンRメプチンRなどのβ2刺激薬をネブライザーで吸入させます。
喘息発作が起きたときにそれを抑えるのが目的の薬ですので、効果の持続時間は短いです。症状が改善しなかったり、再発する場合は、医療機関を受診して下さい。医療機関では、さらに強力な治療(酸素吸入、ステロイドの静脈注射、輸液)を行います。

乳幼児ではβ2刺激薬があまり効かないことがある

乳幼児では、風邪などのウイルス感染に対して気道が過敏に反応して、喘息発作が起きることが多いです。このような乳幼児の気管支喘息では、β2刺激薬の吸入があまり効きません。気道の感染を伴っているので、気道分泌物(痰のことです)が多く、さらにもともと気道自体も狭いために、β2刺激薬で気道を広げても症状の改善には限界があるからです。

このような場合、長期管理薬であるロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカスト)を1ヶ月くらい飲んでもらって治療します。

1ヶ月くらいたって症状がおさまったら、いったん薬を止めてみます。薬を止めると、再びゼーゼーする場合は、気管支喘息であると判断でき、長期管理薬を続けることをすすめます。これを診断的治療とよびます。

喘息の長期管理薬を発作のない時期も続け、気道を良い状態に保つ!

気管支喘息をうまく管理するには、発作のないときも薬を続けることが大切です。気管支喘息の患者さんでは、発作のないときも、気道に炎症が起きていて、気道が過敏な状態にあります。発作のないときも薬を続けて、気道の炎症を抑えることが、喘息の重症化を防ぐために大切なことです。

気管支喘息の長期管理には、ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカスト)と、ステロイドの吸入薬が使われます。どちらも気道の炎症を抑える効果があります。

年に数回の発作が起きる程度であれば、ロイコトリエン受容体拮抗薬を飲んでもらいます。
月に1回以上発作を起こすようなら、ステロイドの吸入薬も使います。吸入ステロイド薬には、ベクロメタゾン(キュバールR)フルチカゾン(フルタイドR)、ブデゾニド(パルミコートR)などがあります。基本的には1日2回、吸入してもらいます。重症度に応じて、吸入量を増やします。パルミコートRには、ネブライザーで吸入できるタイプ(吸入懸濁液)もあるので、小さい子どもに使うときに便利です。

ステロイドと長時間作用型のβ2刺激薬が配合された吸入薬(アドエアRなど)もあり、中等症以上の患者さんで使うことがあります。ただし、この薬は5歳未満の子どもには使えません。

Q&Aコーナー

Q:子どもが風邪をひいたときにゼーゼーするのは、気管支喘息なのですか?

A:風邪をひくたびにゼーゼーする子どもに、「気管支が弱い」とか、「喘息性気管支炎」と診断することがありました。最近はこれを「非IgE関連喘息」と呼ぶようになりました。つまり、風邪をきっかけにゼーゼーするのも、気管支喘息の一種であり、喘息の薬を使って治療します。ただ、5歳以上の子ども、あるいはおとなにみられる気管支喘息とは、少し病気のメカニズムが違うようです。
子どもの気管支喘息は、(1) IgE抗体が関与するアレルギー反応による「IgE関連喘息」と、(2) IgE抗体とは無関係におこる「非IgE関連喘息」があります。
5歳以上の子どもの喘息は、基本的にはIgE関連喘息です。おとなの喘息も同様です。
一方、非IgE関連喘息は、乳幼児にみられます。乳幼児が風邪をひくと、喘息のようなゼコゼコとした呼吸になることがよくあります。乳幼児では、ウイルス感染に対して気道が過敏に反応しやすく、IgE抗体とは無関係に喘息発作が起きます。非IgE関連喘息は、幼児期を過ぎると喘息を起こさなくなることが多いですが、一部の患者さんでは、学童期にIgE関連喘息に移行します。
もちろん、乳幼児でもIgE関連喘息になることがあります。アトピー性皮膚炎があったり、気道感染がないときにゼーゼーしたり、両親のどちらかも喘息を患っているなどの特徴があります。乳幼児のIgE関連喘息は、学童期以後も続くことが多いです。

Q:ホクナリンテープRはどのようなときに使いますか?

A:呼吸がゼーゼーしたり、咳が続くときに、ホクナリンテープRを処方されたことのある子どもは多いと思います。ホクナリンテープは、β2刺激薬を皮膚から吸収されるようにした薬で、気道を広げる効果があります。効果が続く時間が長いことが特徴です。
実は、気管支喘息の治療におけるホクナリンテープの役割は限られています。ロイコトリエン受容体拮抗薬とステロイドの吸入薬を使っても喘息の管理が今ひとつの場合に、短期的(最大2週間)に追加で使用するものです。
ホクナリンテープRは貼り薬なので、気軽に使用されることが多いですが、副作用もあります。交感神経を刺激するので、動悸(心臓がドキドキする)や手の震え、頭痛を感じる方もいます。医師の指示に従って使うようにしましょう。

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