ビタミンDとカルシウム

 成長期の子どもにとって、ビタミンDとカルシウムは、骨の成長になくてはならない栄養素です。最近は、あまり屋外に出ない生活習慣やかたよった食生活のために、ビタミンD欠乏症になる子どもが増えているようです。

日光を浴びると皮膚でビタミンDが作られる

 ビタミンDは、腸管からカルシウムを吸収するのを助ける働きがあり、ビタミンDが欠乏するとカルシウム不足になってしまいます。

 ビタミンDは、実は皮膚で作られています。皮膚がビタミンDを作るのには、紫外線(UVB)が必要であり、赤ちゃんや子どもに適度な日光浴がすすめられているのはこれが理由です。

ビタミンDが欠乏した子どもは、骨の成長障害(くる病)になる

 子どもの骨が正常に成長するには、カルシウムが欠かせません。骨端とよばれる骨の先端には、類骨という骨になる前の組織があり、これにカルシウムなどが付いて骨化することにより、子どもの骨が成長します。カルシウム不足になると骨が縦方向に正常に成長せず、「くる病」という病気になります。くる病では、足の骨が変形してO脚やX脚になり、うまく歩けなくなります。また、肋骨や手首・足首が変形してふくらんだり、頭蓋骨が薄くなったり、乳歯が生えるのが遅れたりします。

 カルシウムは、骨の成長以外にも、筋肉が縮んで力を発揮するのに重要な役割をしており、カルシウム不足により手足がつったり(テタニーといいます)、しびれたり、痙攣することもあります。

ビタミンD不足に対しては、予防が大切

 ビタミンD欠乏は、適度な日光浴を心がけることで予防できます。衣服や季節による違いもあるので一律に基準を定めるのは難しいですが、おおまかな目安として、1週間あたり2時間程度、薄着で日なたに出るようにすれば十分です。生後6ヶ月未満では、直射日光は避け、日よけを使って下さい。冬であれば、日の当たる窓際で過ごす時間を作りましょう。

 ビタミンDは皮膚で作られる以外に、食事からも体内に取り込まれます。バランスの良い食生活もビタミンD不足の予防に重要です。粉ミルクは、あらかじめビタミンDが強化されています。母乳育児をしている場合、お母さんにビタミンD不足があると、赤ちゃんもビタミンD欠乏になる危険性がありますので、お母さんがビタミンDのサプリメントを摂取することも一つの方法です。また、子どもが、食物アレルギーのために食事を制限している場合は、ビタミンD欠乏に特に注意が必要です。心配なことがあれば、お医者さんに相談しましょう。

参考文献:Arch Dis Child 2020;105:399-405 / N Engl J Med 2020;383:2462-2470

Q&Aコーナー

Q:ビタミンDを多く含む食品にはどのようなものがありますか?

A:脂身の多い魚(サケ、サバ、イワシなどの青魚)や卵の黄身、牛乳は、ビタミンDを多く含んでいます。ただ食事だけから十分なビタミンDを摂るのは難しいようです。ビタミンD欠乏の危険が高い場合(例えば、日中にほとんど出かけない人、冬の北欧など日の短い地域に住んでいる人など)は、ビタミンDのサプリメントを摂取することがすすめられます。

Q:大人がビタミンD欠乏になったら、どのような症状が出ますか?

A:ビタミンDが必要なのは、赤ちゃんと子どもだけではありません。ビタミンDが不足すると、大人では骨軟化症、お年寄りでは骨粗鬆症になります。
 ちなみに、ビタミンDは、腎臓で活性型ビタミンD(1,25-dihydroxyvitamin D)に変換されてはじめて人体で効果をあらわします。慢性腎不全の患者さんでは、ビタミンDを活性化できず、骨軟化症や骨粗鬆症になることがあります。

Q:ビタミンD欠乏、くる病が心配な場合、病院ではどのような検査をして診断しますか?

A:まず、全身の診察をして、くる病の症状がないかをチェックします。くる病になって骨が変形すると、うまく立てない、歩けないなど、運動発達に影響がみられます。年齢相当の運動発達が得られているかも重要なチェックポイントです。手や膝の骨のX線写真をとると、外から見ても分からない骨の変形が診断できます。
 血液検査では、カルシウムやビタミンDの値を測定することができます。一般的に、くる病では、血清カルシウム値が低下すると同時に、副甲状腺ホルモン(PTH)が高値になり、またアルカリフォスファターゼが高値、リンが低値になります。大人と子どもでは正常値がかなり違うので、異常値かどうかは、年齢別の基準値と照らし合わせて判断します。ビタミンDの計測には、25-hydroxyvitamin D(活性化される前の安定した形のビタミンD)の血中濃度を測定し、これが低値であれば、ビタミンD欠乏と分かります。ビタミンD欠乏以外にも、くる病を引き起こす珍しい病気があります(例えば、摂取したビタミンを活性化できない病気、あるいはカルシウムを調節するPTHというホルモンが作れない病気など)ので、原因の診断をしっかり行います。

Q:ビタミンD欠乏症になったら、どのような治療をしますか?

A:活性型ビタミンD3製剤を補充します。シロップや粉薬もあり、子どもにも飲ませやすいようになっています。定期的に血液検査や尿検査を行って、改善してくれば、薬を減らしていきます。必要以上にビタミンDの補充を行うと、カルシウム過多により腎石灰化が起こる危険があります。
 生活習慣や食習慣の改善も同時に進めます。そうしないと、薬を止めたらまたビタミンDが不足してしまいますから。

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