なかなか眠れない、ぐっすり眠れない

 現代の日本では、大人の約10%が不眠症だと言われています。不眠症は、仕事や学習などの日常生活に悪影響があるだけでなく、病気にもつながります。睡眠不足だと、食欲を抑えにくくなり、食べ過ぎて肥満や糖尿病などの生活習慣病を起こしやすくなります。また、睡眠不足そのものが、血糖値を上がりやすくする効果があり、糖尿病を悪化させます。健康を維持する上では、質の高い睡眠が不可欠です。

 当院では睡眠薬の継続処方は行っておりませんので、投薬をご希望の場合は、心療内科や精神科など、専門医の受診をおすすめします。

寝床で過ごす時間は6~7時間が適切、長すぎても短すぎてもダメ!

 なかなか眠れない(入眠困難)とか、ぐっすり眠れない(睡眠維持困難・早朝覚醒)ことが、週に3日以上あり、3ヶ月以上続く場合は、不眠症と考えてよいでしょう。

 寝床に就いても眠れないのは、実際のところ、かなりの苦痛を感じるできごとです。眠れないことへの恐怖感、不安感が大きくなり、ますます眠れないという悪循環に陥ってしまいます。夕食後から寝るまでの時間を、楽しんで過ごすことを第一に考えましょう。そして、眠気を感じてから寝床に行くようにします。また、平日でも休日でも規則正しく同じ時間に起床することも大切です。睡眠時間が長すぎると、眠気を感じにくくなり、逆にぐっすり眠れなくなってしまいます。寝床で過ごす時間は6~7時間が適切です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使って規則正しい睡眠リズムを目指す

 睡眠薬は正しく使えば、不眠症の治療に高い効果を発揮します。

 最も一般的に使われるのは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。入眠困難には超短時間作用型のトリアゾラムなどが有効です。睡眠維持困難や早朝覚醒には、作用時間が少し長いもの(短時間型=ブロチゾラム)など、中間型=フルニトラゼパムなど)を使います。

 眠れないときだけ使うのではなく、毎晩、決まった時間に飲んで、規則正しい睡眠リズムを作りましょう。安定して睡眠がとれるようになったら、薬を減らしていくよう努めます。逆に不眠が悪化したときは増量します。睡眠薬は医師の指示にしたがって使用して下さい。

 当院では睡眠薬の継続処方は行っておりませんので、投薬をご希望の場合は、心療内科や精神科など、専門医の受診をおすすめします。

睡眠薬は副作用に注意して少量から始めよう

 ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、筋力が下がって転びやすくなる、記憶障害を起こす、といった副作用があります。翌朝になっても睡眠薬の効果が残って集中力が低下することもあります。副作用が出やすくなるので、睡眠薬とアルコールを同時に摂取してはいけません。また、長期間使用していると、効き目が悪くなってきます。

 別の系統の睡眠薬として、メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)があります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると効果は弱いですが、副作用は少ないです。高齢者の入眠困難がメインの不眠症には、ちょうどよい睡眠薬です。

 オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント、レンボレキサント)は、睡眠維持困難に効果が高いです。ふらつき、転倒、記憶障害の副作用は少ないので、高齢者にも比較的使いやすいといえます。ただし、朝に眠気が残りやすかったり、悪夢をみることがあります。

 当院では睡眠薬の継続処方は行っておりませんので、投薬をご希望の場合は、心療内科や精神科など、専門医の受診をおすすめします。

Q&Aコーナー

Q:カフェインを含む飲み物(コーヒーや紅茶)は、寝る何時間くらい前まで飲んでよいのですか?

A:カフェインは、飲んでから15分~2時間後くらいに血中濃度がピークに達します。血中濃度がピークの半分になるのは、飲んでから4時間くらいです。したがって、質の高い睡眠を得るためには、就寝時間の4時間前以降はカフェインの摂取は控えるのがよいでしょう。

Q:睡眠時無呼吸症候群とは何ですか?

A:寝ている間に、上気道が閉塞してしまって呼吸が停止することを繰り返す病気が、閉塞性睡眠時無呼吸です。いびきと同じ仕組みで起きますが、ただのいびきではなく、しばらくの間完全に呼吸が止まってしまいます。苦しさのあまり途中で目覚めてしまうこともあります。十分な睡眠がとれないため、日中に異常な眠気を感じます。閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんは、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症もお持ちの方が多いです。また、閉塞性睡眠時無呼吸があると、慢性的に体内で炎症反応が起き、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患や脳卒中の危険を高めます。
 閉塞性睡眠時無呼吸は治療できます。体重を減らすことや、重症なら持続陽圧呼吸療法(寝ている間の呼吸サポート)で治せます。睡眠薬は使ってはいけません。無呼吸が悪化してしまいます。

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