尿検査で分かること

 尿検査は手軽にできる検査であり、健康状態に関するたくさんの情報を教えてくれます。一般的には、まず、試験紙を尿につけて尿タンパクや血尿などの有無を知る「尿定性検査」をおこないます。必要に応じて、「尿生化学」、「尿沈渣」、「尿培養」などの詳しい検査を追加します。

 ここでは、「尿定性検査」でどんなことが分かるかを解説します。

尿潜血

 尿の中に、血液の成分(ヘモグロビン)が含まれるかどうかを調べます。尿潜血が陽性なら、「尿沈渣」の検査をおこないます。これで尿中に赤血球が存在することが確認されれば、血尿と判断します。

 血尿が持続する場合は、腎臓~尿管~膀胱~尿道からなる尿の通り道に病気がある可能性があります。糸球体腎炎、尿路感染症、あるいは尿管結石などが考えられ、検査を進めます。

 血尿は膀胱がんの最初の症状のこともあります。特に、40歳以上、喫煙歴のある人、尿沈渣で赤血球が10個/高視野以上、などの項目を満たす場合は膀胱がんの可能性が高くなります。泌尿器科を受診し、超音波検査や膀胱鏡検査で詳しく調べてもらいましょう。

 尿潜血が陽性にもかかわらず、血尿でない場合もあります。溶血性貧血などで壊れた赤血球の中のヘモグロビンが尿に出ている場合や、筋肉のダメージで筋細胞中のミオグロビン(ヘモグロビンと構造が似ています)が尿に出ている場合、あるいは一部の細菌(エンテロバクター、ブドウ球菌、連鎖球菌)が尿中に存在する場合です。

尿糖

 尿中に糖が出ているかどうかを調べます。尿糖が陽性ですと、糖尿病の可能性があり、血液検査などが必要になります。

尿タンパク

 尿の中にタンパク質が含まれるかどうかを調べます。タンパク質の中でも主にアルブミンを検出する検査です。

 高熱が出た時や、激しい運動の後、あるいは脱水気味の時などには、一時的にタンパク尿が見られることがあります。再検査してタンパク尿がみられなければ、心配いりません。また、起立性タンパク尿といって、立った姿勢をとり続けていると、タンパク尿がみられることがあります。朝、起床した直後にとった尿で検査をしてタンパク尿がなければ、起立性タンパク尿と考えます。これも心配無用で、治療も不要です。

 持続してタンパク尿がみられる場合は、「尿生化学検査」で「尿中タンパク質/クレアチニン比」をチェックして、尿中タンパクの量を調べます。尿中タンパクが多いようなら、腎臓病(糸球体腎炎や尿細管障害)を疑って精密検査に進みます。

白血球エステラーゼ

 尿路感染症を起こしていないかの手がかりになる検査です。腎臓や尿管に細菌感染が起きると、白血球が集まってきて細菌を攻撃してくれます。白血球が出す武器にエステラーゼという分解酵素があり、これが尿の中含まれているかを調べます。白血球エステラーゼが陽性なら、尿路感染を考えて、「尿培養」検査を追加して原因となる細菌を突き止めます。

 白血球エステラーゼは、薄い尿やアルカリ尿では偽陽性に、逆に濃い尿や尿糖・尿タンパクが多い尿では偽陰性になりますので、注意が必要です。

亜硝酸塩

 グラム陰性桿菌というグループに属する細菌は、硝酸塩を亜硝酸塩に変える働きがあります。尿中に亜硝酸塩が検出されると、感染の原因が大腸菌などのグラム陰性桿菌である可能性が高いと言えます。ただ、感度の低い検査であり、検出力は高くありません。

ケトン体

 尿中にケトン体が検出されると、飢餓、嘔吐、脱水、あるいは糖尿病ケトアシドーシスの状態にあることが分かります。激しい運動の後にも尿ケトン体が陽性になります。

pH

 尿のpHを測ることで、尿がアルカリ性に傾いているか、酸性に傾いているかが分かります。pHそれ自体が病気を示すというより、尿検査の結果の解釈に影響を与えます。例えば、アルカリ尿では赤血球や白血球が壊れやすくなり、尿沈渣で赤血球・白血球が偽陰性になったり、白血球エステラーゼは偽陽性になったりします。

Q&Aコーナー

Q:検査用の尿をとるときには、どんなことに気をつければ良いですか?

A:細菌などの混入を防ぐため、尿をとる前には、手を洗いましょう。尿の出口に目に見える汚れがあれば、きれいに拭き取って下さい。出始めの尿はとらずに、中間尿を検査用のコップにとりましょう。
 激しい運動をすると、そのせいで一時的にタンパク尿や血尿が出ることがあります。もし、長時間のジョギングなどをしていた場合は、医師に伝えて下さい。正確な検査結果を得るために、理想的には検査の3日前から激しい運動はしない方が良いです。
 ビタミンCのとりすぎは、試験紙の反応に影響を与えることが知られています。ビタミンCのとりすぎにより、尿潜血や尿糖が偽陰性(実際には陽性なのに検出されない)となり、見逃してしまうことになります。

Q:尿沈渣では何が分かりますか?

A:尿沈渣とは、遠心分離した尿を顕微鏡で見て、尿中の細胞成分や結晶成分などを分析する検査です。
 試験紙法による尿定性検査では、尿中の赤血球や白血球を直接調べているわけではありません。尿定性検査で血尿や白血球尿が疑われたら、尿沈渣で本当に赤血球や白血球が出ているか確定させる必要があります。赤血球の形をみることで、血尿の原因も推測できます。つまり、赤血球が変形していなければ尿路からの出血、変形していれば糸球体からの出血と考えられます。
 また、尿沈渣では、尿細管から正常でも分泌されるTamm-Horsfall糖タンパクが、かたまってできた円柱という物質を観察できます。尿に円柱が存在すること自体は正常です。病気によっては、円柱と赤血球や脂肪、上皮細胞などが一緒にかたまってできることがあり、これを分析すると病気の診断の手がかりになります。
 結晶とは、ふつうは尿中に溶けている成分が、何らかの原因で析出したものです。よくあるのは尿酸塩結晶で、汗をかいて、脱水気味の時には、尿が濃くなり、尿酸塩の結晶が出やすくなります。尿酸塩の結晶は薄ピンク~琥珀色をしており、尿に色が付いてみえます。そのほか、薬が結晶になって尿に出てくることもあります。この場合は、薬が腎臓に負担をかけていないかどうか調べる必要があります。

参考文献

Urinalysis: Core Curriculum 2008. Am J Kidney Dis 2008;51:1052
Hematuria in Adults. N Engl J Med 2021;385:153

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