心房細動

 心臓の脈が乱れる病気を「不整脈」と呼びます。中年以降でみられる持続性の不整脈で、最も多いものが「心房細動」です。正常では、心房にある洞結節という場所から、一定のリズムで電流が発生し、これが心臓全体に伝わることにより、心臓が規則正しく脈打ちます。ところが、心房細動になると、心房のあちこちで異常に速いリズムで、不規則な電流が発生してしまいます。

 心房細動の患者さんが直面する問題は、大きく分けて3つあります。

心臓が速く、不規則に脈打つため、動悸を感じる

 心房細動になると、心臓の脈が、速く、不規則になります。そのため、運動しているわけでもないのに心臓がドキドキしてしまいます(この症状を動悸といいます)。個人差はありますが、これはかなり不快な症状で、日常生活に支障が出ることもあります。さらに、疲れやすくなったり、ひどい場合には、心臓がじゅうぶんな血液を送り出せなくなり、低血圧や失神をおこします。

 心房細動は、最初のうちは、断続的であり、しばらくすると自然に止まります。これを発作性心房細動といいます。放置しておくと、心房細動が続く時間が長くなり、やがて持続的におきる(持続性心房細動)ようになります。

 心房細動を止めるにはいくつかの方法があります。飲み薬(抗不整脈薬)、電気ショック(カルディオバージョン)、カテーテル治療(心筋焼灼術)などから、患者さんの病状に応じて選びます。心房細動を止めるのが難しいこともあり、その場合は、飲み薬で心臓の脈が速くならないようにするだけでも、症状は改善します。

心房が小刻みに震えるため、血栓ができやすくなる

 心房細動では、心房が小刻みに震え、そこで血のかたまり(血栓)ができやすい状態になります。心房でできた血栓は、心臓が血液を送り出すときに一緒に血管の中へ送り出され、体のいろいろな血管を詰まらせてしまう(血栓塞栓)危険があります。特に、脳の血管が詰まってしまい、脳梗塞を起こす危険が高いです。

 年齢や、今までにかかったことのある病気によって、血栓塞栓を起こす危険が高いと判断された場合は、血液をかたまりにくくする薬を飲むことになります。俗に「血液をさらさらにする薬」と呼ばれることもあります。医学的には「抗凝固療法」と呼びます。

心臓に負担をかけている病気が隠れているかもしれない

 心房細動は、年をとるだけでも起きやすくなるもので、加齢現象の一つと言えます。しかし、加齢以外にも、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、アルコールの飲み過ぎ、睡眠時無呼吸、甲状腺の病気など、心房細動を起こしやすくなる要因があります。心房細動と診断された場合は、血圧や血糖値、コレステロール値などもチェックしましょう。必要があれば飲み薬で、これらの要因も治療するのがよいでしょう。

参考文献:Michaud GF, Stevenson WG. Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2021;384:353

Q&Aコーナー

Q:心房細動は完全に止めてしまう必要があるのですか?

A:心房細動の治療は、目標によって2つに分けられます。1つが心房細動を止めることを目指すもので、リズムコントロールとよびます。もう1つは、心房細動を止めるのではなく心臓の脈が速くなりすぎないようにすることを目指すもので、レートコントロールとよびます。当然、リズムコントロールの方が良いと思うかもしれません。しかし、実は、大規模な研究の結果、レートコントロールの方がむしろ患者さんの寿命は長くなる傾向があるようなのです(N Engl J Med 2002;347:1825)。実際、心房細動を飲み薬だけで完全に止めるのは難しく、カテーテル治療(心房内の不規則な電流の発生源となっている心筋を焼き切ってしまう)を行っても15%~50%の患者さんで再発することもあります。
 まずは、レートコントロールを目標にして、心臓の脈が速くならないようにし、動悸や疲れやすさなどの症状が良くなるかどうかみてみましょう。レートコントロールでは症状があまり軽減しない場合に、リズムコントロールを試みることになります。
 一方、心不全がある患者さんでは、リズムコントロールの方が良く、まず第一にカテーテル治療を行うことが増えているようです(Circ Arrhythmia Electrophysiol 2009;2:349)。治療法を決めるにあたっては、患者さんの希望もかなり大切な要素ですので、医師とよく相談するようにしましょう。

Q:心房細動に対する抗不整脈薬について詳しく教えて下さい。

A:レートコントロールに用いられる抗不整脈薬としては、ベータ遮断薬(カルベジロール・メトプロロール)やカルシウム拮抗薬(ジルチアゼム・ベラパミル)があります。心不全がある場合は、ベータ遮断薬が使われます。まずは、心拍数を毎分80~100くらいまで下げること目指します。それでも症状が改善しない場合は、もっと厳しめに毎分60~80くらいになるように、薬の量を増やします。
 リズムコントロールに用いられる抗不整脈薬としては、アミオダロンやソタロールがあります。飲み薬で心房細動を完全に止めるのは難しく、有効率は50%くらいといわれています。最近は、カテーテル治療が行われることが増えてきています。

Q:心房細動に対する抗凝固療法はどんな場合に必要ですか?

A:心不全(1点)、高血圧(1点)、75歳以上(1点)、糖尿病(1点)、脳梗塞を起こしたことがある(2点)の5項目から点数を計算します。2点以上なら、血栓塞栓の危険が高いと判断し、抗凝固療法が必要です。1点の場合も、抗凝固療法を行うメリットがあります。
 抗凝固療法には、昔から、ワーファリンという薬が使われてきました。これは、安価で、効果も高い薬です。欠点として、効き過ぎると血が止まりにくくなるという問題があります。この欠点が少ないのが、最近開発されたDOAC(リバーロキサバンなど)という抗凝固薬です。DOACが使われることが増えてきましたが、弁膜症で人工弁の手術をした患者さんではワーファリン一択となります。
 なお、抗血小板薬(アスピリンなど)は、心房細動による血栓塞栓の予防には効果がありません。

Q:心房細動はどうやって診断するのですか?

A心房細動は、心電図で診断できます。ただ、発作性心房細動の場合は、心電図検査をした時に発作が起きていない診断できません。患者さんの症状から、心房細動の可能性が高い場合は、心電図検査を繰り返したり、24時間心電図(ホルター心電図)をとったりして、心房細動が起きている瞬間をとらえるよう努めます。

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