子どもの新型コロナウイルス感染症

 日本国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかって、2020年1月~2021年2月の期間に入院した18歳未満の子ども、1038人のデータをまとめた報告が、英文学術誌に発表されました(Shoji K, et al. J Pediatric Infect Dis Soc 2021, in press)。このデータをもとに、日本国内の子どもにおけるCOVID-19の特徴、子どもたちを守るために保護者ができることは何か、考えてみました。

重症化する子どもは、ほとんどいない

 入院した子ども1038人のうち、酸素投与が必要になったのが15人(2%)、呼吸器の装着やECMOが必要になった子どもはゼロでした。死亡例もありませんでした。

 そもそも、入院した子どもの約30%は無症状でした。さらに興味深いのは、無症状の子どもも、有症状の子どもも、入院期間は8日(中央値)であり、差がありませんでした。症状があった子どもも、非常に軽症であったことが分かります。

 治療が必要だから入院したのではなく、隔離目的の入院、あるいは両親が感染して入院し面倒を見る人がいないために社会的な理由で入院した子どもが多いのです。

発熱するのはわずか10%

 有症状の子ども730人にみられた症状は、多い順に、咳(37%)、鼻水(29%)、のどの痛み(16%)でした。38℃以上の発熱があったのは75人(10%)にすぎませんでした。

 なんらかの持病がある子どもでも、極端に症状が出やすいとか、重症化しやすいということもありませんでした。もちろんこれは、重い持病のある子どもたちが、とくに気をつけて感染対策をとっており、そもそも感染者が少ないためかもしれません。マスク、手指消毒といった基本的な感染対策の重要性はいうまでもありません。

子どもにとっては「新型コロナウイルス」が特別に危険というわけではない

 ここまで紹介したデータは、入院した子どもを対象にしたものなので、家で様子を見ていた子どもも含めれば、症状の出現率や重症度はさらに低くなるはずです。

 子どもにとっては、よくある風邪のウイルスと比べて、新型コロナウイルスが特別に危険というわけではないと言えます。また、新型コロナウイルスだからといって、子ども自身に特別な治療が必要なわけでもありません。

 新型コロナウイルスかどうかを問わず、かぜにかかれば、高熱が出て痙攣を起こしたり、痰がたまって肺炎になったりするお子さんはいらっしゃいます。かぜ症状のある子どもにとっては、重症肺炎になっていないか、意識状態は正常か、あるいは心筋炎の症状はないかが重要なのです。これは、新型コロナウイルスだろうが、他の風邪のウイルスだろうが、同じことです。

 ここで紹介した研究は、いわゆるデルタ株が流行する前のデータが元になっています。ただ、私の知る限り、2021年の夏以降、子どもの新型コロナウイルス重症患者が増えたということはありません。子どものCOVID-19の特徴は、現在も大きく変わってはいないと思います。

ワクチン接種で社会を守り、子どもたちの日常を守ろう

 子どもでは新型コロナウイルスに感染しても、発熱することは少なく、症状は軽微です。熱があったら学校は休むのは当然ですが、そもそも熱のない感染者も多いので、学校などでの感染を完全に防ぐことは不可能です。また、個別の配慮は必要ですが、重症化することがほとんどない以上、一斉に休校したり、学校行事などを全て中止するなどの対応は過剰とも考えられます。将来のある子どもたちには、学校や社会でたくさんの経験をして成長してほしいと思います。

 新型コロナウイルスから社会を守るためには、高齢者や基礎疾患のある方も含め、なるべく多くのおとなが、ワクチン接種を受け、マスクや手指消毒などの基本的な感染対策を徹底することが大切です。

 子育て中のパパ、ママには、ワクチン接種をしたうえで、のびのびと子育てをしていただきたいと思います。子どもの生活に極端な制限をかけるのは、効果に乏しい上に、子どもたちの成長にとって悪影響の方が大きく、将来にわたって禍根を残すことになりかねません。

 2020年初頭から、世界を大混乱に陥れた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック。世界中の専門家が叡智を結集した結果、治療法が少しずつ確立され、かなりの効果を持つワクチンも開発され、少しずつ落ち着きを取り戻してきています。未知の感染症にはどうしても過剰な不安を抱いてしまいます。近い将来、過剰な対応が是正されて、現実的な対応が広く受け入れられ、子どもたちの日常が取り戻せることを願っています。

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