赤ちゃんの貧血

生後6ヶ月から2歳までの間は、体の成長に鉄の摂取が追いつかず、鉄不足による貧血(鉄欠乏性貧血)を起こしやすい時期です。貧血になると、血が薄くなって、体のすみずみまで酸素を届ける効率が下がり、身体の成長や精神の発達に悪い影響があります。

生後6ヶ月を過ぎると、鉄の”貯金”が足りなくなってしまう

生後6ヶ月から2歳までの間の、食事から摂取すべき鉄の量は、1日あたり4.5~5.0 mgとされています(厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版)。身体がはるかに大きい成人男性の推奨量が1日あたり7.5 mgですから、かなりの量であることが分かります。

母乳の鉄濃度は1 Lあたり0.35 mgであり、粉ミルクの鉄濃度1 Lあたり7.8 mgに比べると、母乳中に含まれる鉄はかなり少ないです(ただし母乳の方が粉ミルクよりも腸が鉄を効率よく吸収できます)。

生後6ヶ月までは、赤ちゃんの体に胎児期から蓄えられていた鉄が十分にあるので、母乳だけ飲んでいても貧血にはなりません。しかし、生後6ヶ月からは、母乳だけだと鉄が足りなくなってしまいます。粉ミルクを足したり、離乳食に鉄を多く含む食材を使ったりして、鉄を補う必要があります。場合によっては病院で鉄剤を処方してもらうのも良いでしょう。

母乳が中心の赤ちゃんは、生後6ヶ月ごろに貧血の検査を受けよう

乳児期にみられる鉄不足による貧血では、ほとんどの場合、何の症状もみられません。「血液検査をしたら、貧血が見つかった」というように診断されることが多いです。ですから、鉄不足になる危険の高い赤ちゃん(完全母乳栄養の赤ちゃんや低出生体重の赤ちゃん)は、生後6~9ヶ月ごろには血液検査をして、貧血がないかチェックするのが良いでしょう。もし貧血が見つかったら、離乳食を工夫したり、場合によっては鉄剤を飲んでもらって、十分な量の鉄を摂取できるようにします。

貧血が強い場合は、鉄剤で治療する

鉄剤は、かなり安全性の高い薬で、安心して赤ちゃんに飲ませることができます。

赤ちゃんによく使われるのは、インクレミンというシロップの鉄剤です。1 mL中に6 mgの鉄が含まれており、1日2~4 mLを3回に分けて飲ませます。注意点として、便が黒色になることがありますが、心配はいりません。粉薬ですと、フェロメアという薬があります。

Q&Aコーナー

Q:授乳中のお母さんが、サプリメントなどで鉄をたくさん摂取すれば、母乳中の鉄も増えますか?

A:残念ながら、お母さんがサプリメントで鉄を多く摂っても、母乳中の鉄の濃度は大きくは変わりません。逆に、発展途上国などで、お母さんの栄養状態が悪い場合も、母乳の成分は大きくは変わらないようです(Am J Clin Nutr 2020;112:1039, J Nutr Sci Vitaminol 2009;55:338)。赤ちゃんを守るために、どんな状況でも母乳の成分は優先的に確保されるという、生命の神秘を感じますね。
 妊娠中および授乳中の女性は、貧血になりやすいです。鉄や葉酸のサプリメントを適量摂取することは、母乳への直接的なメリットはなくても、お母さん自身の健康維持には役立ちます。

Q:乳児期に貧血があると、知能の発達などに悪い影響が出ますか?

A:乳児期に貧血があると、学童期の認知機能に悪影響が出る可能性が、いくつかの研究で示されています(Dev Med Child Neurol 2013;55:401)。認知機能は、赤ちゃんの時からの色々な条件(例えば、本の読み聞かせをたくさんしてもらったかどうか、など)にも影響されますから、本当にそれが貧血のせいなのかどうかは、専門家の間でも、意見が分かれます(Nutrients 2020;12:2001)。ただ、悪影響が出る可能性がある以上、乳児期の貧血の「予防」と「早期発見・早期治療」に努めるのがよいと言えるでしょう。
 念のため、説明しておくと、こういった認知機能の研究は、学校のテストの成績などを調べるわけではありません。例えば、コンピュータの画面を見て、「あ」と「え」が表示されたら素早くボタンを押し、それ以外の文字が表示されたときはボタンを押してはいけない、といったような単純化したゲーム的な実験で、間違ってボタンを押した頻度とか、ボタンを正しく押すまでの反応時間とかを調べるのです。ですから、認知機能が悪いといっても、それが日常生活や学校の成績に照らして、どのくらい困ったことにつながるかは必ずしも分からないことに注意が必要です。

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