髄膜炎菌ワクチン

 髄膜炎菌は、感染すると非常に重症となります。血液に侵入した髄膜炎菌が全身に広がり(敗血症)、さらに脳に達して髄膜炎を起こします。早期に正しく診断と治療が行われても、約10%の患者さんが48時間以内に死亡し、回復しても約20%の患者さんが重い後遺症を残します。寮や合宿などの集団生活をする10代~20代の若者の間で髄膜炎菌の感染が広がることが多いといわれています。

 こんな恐ろしい髄膜炎菌ですが、実は、髄膜炎菌感染症はワクチンで予防できるのです。

海外では髄膜炎菌ワクチンは子どもに定期接種されている

 アメリカや中国など、諸外国では、髄膜炎菌ワクチンが定期接種として子どもに投与されています。髄膜炎菌は、地域によって、保菌者の比率や、流行する菌の種類(血清型で分類します)が異なります。日本では保菌者が0.4%(欧米は5~20%)と少ないこともあって、定期接種の対象にはなっていません。

 当院では、国が承認した髄膜炎菌ワクチン(商品名:メナクトラ)の自費接種を行っています。メナクトラは、髄膜炎菌のうちA・C・Y・Wの4種類の血清群に対応したワクチンです(日本国内で検出される髄膜炎菌は血清群Yが多い)。2歳以上の場合は1回接種、9ヶ月~2歳未満なら2回接種が必要です。接種から2~4週間で、感染予防効果が得られます。

 イギリスやニュージーランドなどでは、血清群Bの髄膜炎菌が流行することがあり、血清群Bに対応するワクチン(MenB-4C)も使用されますが、日本では未承認のワクチンです。

寮や合宿で集団生活する学生、海外へ留学する方は、髄膜炎菌ワクチンの接種を

 髄膜炎菌による重症感染症は、10~20代の若者と、50~70代の高齢者に多く見られます。特に問題になるのは10~20代の若者で、寮や合宿での集団生活を通して、クラスターが発生することがあります。日本でも2011年に、寮生活を送る宮崎県の高校生の間で集団発生し、1名が死亡した事例があります。アメリカでは、寮生活や合宿が多くなる中高生になる前の11~12歳時に定期接種することになっています。

 日本でも、寮や合宿で集団生活を送る学生さんは、髄膜炎菌ワクチンを接種しておくと安心です。また、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどに留学する方も、旅立つ前に髄膜炎菌ワクチンを接種しておくのがよいでしょう。

無脾症の患者さんは、2歳になったら髄膜炎菌ワクチンを接種しよう

 無脾症とは、生まれつき脾臓がない病気で、一部の複雑な心臓病の患者さんに伴うことがあります。脾臓は、私たちの体を細菌感染から守るために重要な役割をしています。特に、髄膜炎菌のような厚い膜(莢膜多糖体)でつつまれた細菌をやっつけるには、脾臓が不可欠です。生まれつき脾臓が機能しない病気の方が、髄膜炎菌に感染すると、非常に危険です。無脾症の患者さんは、2歳を過ぎたら早めに髄膜炎菌ワクチンを接種するのが望ましいです(自費接種になります)。

 莢膜多糖体でつつまれた細菌には、髄膜炎菌のほかにも、肺炎球菌やヒブがあります。これらの細菌感染も、無脾症の患者さんにとっては極めて重症化しやすいです。幸い、肺炎球菌(13価)とヒブに対するワクチンは、赤ちゃんの定期接種の対象になっています。さらに多くの種類の肺炎球菌をカバーする23価の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)があります。無脾症の患者さんは、2歳を過ぎたら、ニューモバックスも接種しましょう。

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