子どもの高コレステロール血症~家族性高コレステロール血症とは?

 健康診断でLDLコレステロールが高いと言われ、コレステロールを下げる「スタチン」という薬を飲んでいる親御さんもいらっしゃるでしょう。高コレステロール血症は、生活習慣病の一種です。動物性脂肪やカロリーの過剰摂取、過度の飲酒を長年にわたって続けると発症します。

 高コレステロール血症の方の中には、「家族性高コレステロール血症」といって、生活習慣にかかわらず、体質的にコレステロール値が高くなる方がいます。

 家族性高コレステロール血症は、意外に多く、全人口の0.3%、つまり300人に1人くらいの頻度です(Atherosclerosis 2003;168:1)。診断されていない方がかなりたくさんいるはずです。家族性高コレステロール血症は、子どものうちから適切な対応をとる必要があります。家族にコレステロール値が高い方がいる場合は、お子さんも検査を受けるのが良いでしょう。大久保駅前・林クリニックでは、小さな子どもの血液検査も可能です。ぜひご相談ください。

将来の心臓病を予防できることが、診断のメリット

 家族性高コレステロール血症は、体内でコレステロールの処理にかかわる受容体の遺伝子異常によって起こります。コレステロールをうまく処理できないために、食事に気をつけていてもコレステロール値が正常まで下がりません。乳児期からコレステロール値が高い状態(正常の2~3倍)が続くため、早期に動脈硬化が進行しやすく、大人になってから心血管疾患を発症する危険が高くなります。

 コレステロール値が高いだけでは症状は全く出ません。乳幼児期には、動脈硬化もはっきりしません。子どもにとって、家族性高コレステロール血症は、病気ではなく、心臓病の危険を高める要因の一つととらえるのがよいでしょう。家族性高コレステロール血症の可能性があれば、早期から食事や運動に気をつけたり、場合によっては薬を飲むことで、心臓病の危険を減らせます。

 家族性高コレステロール血症と診断されたら、コレステロールの数値次第では8~10歳くらいから内服薬を飲み始めます。内服薬は非常に有用で、子どもの場合は副作用も少なく、将来の動脈硬化と心血管疾患を大きく減らす効果が証明されています(N Engl J Med 2019;381:1547)

血液検査で診断できる

 コレステロール値が高いだけでは症状は全く出ないので、診断には血液検査が必須です。日本よりも心血管疾患が多い欧米では、家族性高コレステロール血症への注目が高く、子どもを対象にした健診で発見する取り組みもなされています(N Engl J Med 2016;375:1628)日本人も食生活が欧米化していますので、日本の子どもも積極的に検査を受けていただきたいと思います。

 ご家族に高コレステロール血症で治療中の方がいるなら、子どもも血液検査を受けてコレステロール値を測定することがすすめられます。特に、ご家族で若くして心血管疾患になった方がいる場合は、特に強く推奨されます。

血液検査は、幼児期でもOK

 診断のための血液検査を受ける年齢は、10歳になるよりも前が理想的です。もっと早くてもかまいません。その理由は2つあります。

 1つめの理由は、家族性高コレステロール血症の治療薬の投与開始が10歳とされていることです。10歳以降から動脈硬化の進行が本格的に始まりますので、もし家族性高コレステロール血症なら、ぜひとも10歳までに診断しておきたいです。

 2つめの理由は、1~9歳の時の方が、コレステロール値の異常が分かりやすいことです(BMJ 2007;335:599)。コレステロール値は食事の影響を受けます。毎日、脂っこい食事をしていれば、遺伝子異常がなくても、コレステロール値は高くなります。しかし、頻繁に外食したり晩酌する大人と異なり、子どもが、毎日脂っこいものを食べることはあまりありません。1~9歳の子どもの血液検査でコレステロール値が高かった場合、それが食事のせいではなく、遺伝子異常による家族性高コレステロール血症の可能性が高くなります。

 とはいえ、高コレステロール血症が判明した場合は、お子さんや親御さんが不安を抱えることになります。検査することのメリット、デメリットについて、医師から十分に説明を受け、血液検査を受けるかどうか決めましょう。

Q&Aコーナー

Q:コレステロール値の基準はどのくらいですか?

A:LDLコレステロール値が2回計測して両方とも190 mg/dL以上であれば、家族性高コレステロール血症の可能性がかなり高いです。また、少なくとも片方の親御さんに高コレステロール血症があったり、親戚に50歳未満で心血管疾患になった方がいる場合は、LDLコレステロール値が160 mg/dL以上であれば、家族性高コレステロール血症を疑います。親御さんが家族性高コレステロール血症の遺伝子異常を有している場合は、LDLコレステロール値が130 mg/dL以上でも要注意です(Lancet Child Adolesc Health 2021;5:652)
 診断基準は年齢、性別、家族のコレステロール値によって変わります。自分で判断せず、必ず医師に相談しましょう。

Q:子どもの診断には、遺伝子検査が必要ですか?

A:最終的には遺伝子検査を行うかもしれませんが、最初に行う検査としては採血してコレステロール値を測定するのがよいでしょう。
 家族性高コレステロール血症の診断は、原因となる遺伝子異常を突き止めることで確定します。ただ、高コレステロール血症で治療を受けている大人で、遺伝子検査まで受けている方は非常に少ないのが現状です。遺伝子検査が行える施設が限られていること、費用が高額なことなどが理由です。さらに、高コレステロール血症を起こす遺伝子異常が全て明らかになっているわけでもありません。子どもの診断の最初のステップとしては、血液検査でコレステロール値を測定するのが現実的でしょう。

Q:家族性高コレステロール血症には「ホモ型」と「ヘテロ型」があると聞きました。どういう意味ですか?

A:家族性高コレステロール血症は、体内でコレステロールの処理にかかわる受容体の遺伝子異常によって起こります。遺伝子は、父親由来のものと母親由来のもので、常に2個がセットになっています。「ホモ型」とは、家族性高コレステロール血症の原因遺伝子が、2個とも異常の場合を指します。異常があるのが1個だけの場合は「ヘテロ型」です。このページでは、「ヘテロ型」の家族性高コレステロール血症について説明しました。「ホモ型」は、20~40万人に1人くらいのかなり珍しい病気です。「ホモ型」では、高コレステロール血症もかなり重症になり、もっと厳重な管理が必要になります。

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