麻疹(はしか)

 2023年5月、都内で3年ぶりに麻疹(はしか)の感染者が確認されました。都の発表によれば、海外から帰国した感染者が発端で、新幹線で同じ車両に乗車していた人にうつってしまったようです。どこまで感染が広がりを見せるかはまだ分かりませんが、国内でも数年に1回は麻疹の流行が繰り返されています。

 感染してしまうと有効な治療法はありません。感染の予防にはワクチン接種が非常に有効です。1歳になったらなるべく早く予防接種を行いましょう。また年長児(小学校入学前の1年間)が対象の2回目接種も忘れないようにしましょう。

麻疹の死亡率は軽視できない

 麻疹ウイルスは、極めて感染力が強い感染症です。感染から10日前後で発症します。最初は発熱、咳、鼻水、結膜炎がみられ、一般的な風邪と区別が付きません。2~3日ほどたつと、発疹が出てきます。発疹はまず顔、とくにおでこにみられ、全身に広がります。発疹が出てくると、熱はさらに上昇して40℃を超えます。1週間から10日で症状は改善します。

 麻疹の怖いところは、その合併症です。肺炎や脳症を合併することがあり、死亡率は先進国でも0.3%あり、軽視できません。亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹ウイルスが脳に持続的に感染することで起きる合併症です。感染から7~10年後に麻疹ウイルスが毒性を取り戻し、脳障害が進行して、死に至ります。

 ワクチンのない時代は、多くの乳幼児が麻疹にかかって命を落としました。子どもが麻疹を乗り越えられるかは、運次第。子どもの生死は神様が決めることと考えられ、麻疹は「命定め(いのちさだめ)」と言われていました。

対象年齢になったらすぐにMRワクチンを接種しよう

 麻疹はワクチンで予防できます。麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)として接種できます。現在は、1歳児と年長児(小学校入学前の1年間)に合計2回、MRワクチン接種を接種することになっています。多くの子どもがワクチンを接種しているおかげで、日本国内から、土着の麻疹ウイルスは排除されました。国外から持ち込まれるウイルスで、麻疹が流行する危険性はありますので、ワクチン接種は必要です。

 1歳の誕生日になったら、なるべく早く、MRワクチンの1回目を接種しましょう。また、年長児になったら2回目の接種がありますので、こちらも忘れずに接種しましょう。どちらも無料で接種できます。

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麻疹が流行したら…生後6ヶ月からMRワクチンが接種可能!

 赤ちゃんは胎児期にへその緒を通して、母体から抗体を受けとっています。母体から受け継いだ抗体は、生後6ヶ月くらいまで赤ちゃんの体の中に残っています。つまり、ママがかかったことのある感染症に対しては、赤ちゃんも免疫があります。ママが予防接種で得た免疫も受け継いでいます。これを移行免疫といいます。移行免疫は、生後6ヶ月になると効果が下がってきます。MRワクチンの接種は1歳になってからですので、生後6ヶ月から1歳までの赤ちゃんは、麻疹に対して無防備な状態にあります。

 万が一、麻疹が流行した場合は、赤ちゃんを守るために、MRワクチンを生後6ヶ月から任意で接種できます。

 2006年~2007年に関東で10~20代の若者を中心とした麻疹の流行がありました。当時、私の子どもは0歳で、保育園に通っていたことから、生後6ヶ月の時点で麻疹ワクチンを接種させました。保育園で集団生活を送る赤ちゃんは、麻疹の流行期には、生後6ヶ月になったらMRワクチンを接種することをおすすめします。自費接種で、接種費用は11,000円(税込)です。1歳未満でのMRワクチン接種は、当院で乳児期の定期予防接種を受けていただいている方のみといたします。また、1歳未満でMRワクチンを接種した場合、1歳になったら改めて定期接種を受けてください。

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未接種でもあきらめないで!小中学生、高校生、おとなにも、MRワクチンの公費補助があります!

 麻疹が極めて危険な感染症であることから、新宿区では、定期接種の機会を逃した方にも、公費でMRワクチンが接種できる制度があります。

 18歳までの子どもで、MRワクチンの2回接種を完了していない場合、無料でMRワクチンが接種できます。1回も接種していない場合は、2回接種できます。1回だけ接種済みの場合は、残り1回分の接種ができます。新宿区役所の保健予防課に、各自で予診票を申し込んでください。

 新宿区在住の19歳以上の方で、妊娠を希望している女性とそのパートナーは、麻疹と風疹の抗体検査が無料で受けられます。抗体検査の結果、抗体価が不十分と判明した場合は、MRワクチンを5,210円の自己負担で接種できます。新宿区役所の保健予防課に、各自で検診票・予診票を申し込んでください。

 公費補助の対象とならない方も、MRワクチンの自費接種が可能です。希望される方は、大久保駅前・林クリニックまでお問い合わせください。ただし、ワクチンの流通状況によっては、すぐに接種ができないことがあります。

Q&Aコーナー

Q:修飾麻疹とは何ですか?

A:母体から受け継いだ麻疹ウイルスに対する免疫(移行免疫)が残っている生後6ヶ月までの赤ちゃんが麻疹にかかった場合、かなり軽い症状で感染が終わってしまいます。これを修飾麻疹と言います。
 修飾麻疹は、発疹は少なく、かつ期間も短いです。全く発疹が出ないこともあります。麻疹ワクチンを接種済みの人で、抗体価が下がっている場合も、同様に軽い症状の麻疹を発症することがあります。修飾麻疹は症状が軽いために、診断が難しく、知らぬ間に感染を広げる可能性があります。ただし、修飾麻疹の患者さんの感染力は、あまり強くないと考えられています。
 麻疹は感染してしまうと有効な手立てがありません。社会全体で、麻疹の感染機会を減らす必要があり、そのためには皆さんがワクチンを接種することが大切です。

Q:MRワクチンはなぜ1歳から接種するのですか?もっと早く接種できないのですか?

A:1歳未満で接種しても安全性には問題はありません。ただ、1歳未満でMRワクチンを接種すると、抗体獲得率が少し低いため、定期接種は1歳からとされています。
 母体から受け継いだ麻疹ウイルスに対する免疫(移行免疫)は、生後6ヶ月たつと効果が下がってきます。MRワクチンを生後6ヶ月に接種すれば、安心な気がしますが、なぜ定期接種は1歳になってからと決められているのでしょうか?その理由は、1歳までは移行免疫の影響が若干残っているために、MRワクチンを接種した場合、十分な抗体が獲得できないという懸念があるからです。生後9ヶ月時にMRワクチンを接種すると、抗体獲得率は87%にとどまります。これは生後12ヶ月の時点で接種した場合の抗体獲得率の95%に比べると不十分と言えます。そのため、定期接種は1歳になってからと定められています。
 万が一、麻疹の流行が起きてしまった場合は、生後6ヶ月になれば任意でMRワクチンを接種することで、赤ちゃんを麻疹の感染から守ることができます。ただし、この場合も、十分な抗体を獲得させるために、1歳になってから改めてMRワクチンを接種してください。

Q:MRワクチンを接種できない場合はありますか?

A:MRワクチンは、生ワクチンですので、妊娠中の女性や、免疫不全の状態にある方には接種できません。
 妊娠をお考えの方は、ぜひ、妊娠前に麻疹・風疹の抗体価をチェックすることをおすすめします。抗体価が不十分なら、MRワクチンを接種しましょう。

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